巨樹を訪ねる 上沼八幡神社の姥杉

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K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR / CarlZeiss Jena Flektogon 20mmf2.8

 宮城県登米市内を北上し、あと2、3キロも行けば岩手県へ突入……というところでこの日は踏みとどまりました。
 岩手を視野に入れてしまうと、その先ずんずん進んでしまいかねません。笑

 午後、日も傾きかけた時分、巨樹を擁するという八幡神社に到着です。
 今年は暖冬だとは言え、さすがに空気が冷たさを帯びている。
 源義家お手植えの伝説が残る「上沼八幡神社の姥杉」を見ます。

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 八幡神社自体は全国各地に数多くあり、登米市にもいくつかあります。
 今回目指すのは「上沼八幡神社」。丘陵地を登っていくような形になりますが、この一帯にも「八幡山」という地名がついている。途中、道が細くなり、りんご農園などもある。
 人の気配が乏しいので辺鄙な印象を受けますが、突如、どーんと大きな赤い鳥居が現れます。
 高台に位置する八幡神社はゆったりと敷地が広く、社叢も大きな樹が多い。
 初詣などは賑わいそうな、風格がある神社でした。

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 門の内側にはこのようにありありと「姥杉」の名が。
 ここへ来たら姥杉を拝まずには始まらないということのようです。

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 でもまずはお詣りを済ませましょう。
 全国にある八幡宮、八幡神社ですが、八幡神自体はいまいち何にご利益がある神様なのかピンときません。
 あくまでそういう印象だという話にとどまりますが、「なんでもアリ」な神様のようにも思えますね。
 応神天皇が神霊化した神とされているようで、神仏習合に積極的(仏教寺院の守護神という立場らしい)なため、仏教伝播とともに全国各地に広がったようです。
 「やはた」「やわた」と読むのが本来で、「はちまん」と読むのは神仏習合後に「八幡大菩薩」という扱いを受けた影響のようです。

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 さて、ここまで来るとすでに十分視界に入っていますが、姥杉。計2本あるとのこと。
 まず、拝殿のすぐ横にあるこちらの杉が「男杉」と呼ばれる杉で、目通り5.6メートルとのこと。
 姥杉という名なのに男杉とはこれいかに……と思うのですが、そこに言及はありません。
 年寄りで、神の側に仕えているというようなイメージでしょうか。

 しかし、杉自体は男杉と命名されるのもわかる、荒々しさを感じる風貌です。
 裏杉的な野蛮さは目立たず、植えられて以降、御神木として欠かさず手入れされてきたものでしょう。

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 杉の御神木としては並ほどのサイズに止まります。
 この前に見た「日根牛の大クリ」が奇遇にも同じ幹周囲5.6メートルです。

 などと、モノサシ判断するのはよくないことで、この神社としては巨樹単独ではなく社叢に価値があるタイプです。
 神社そのものも、社叢も規模が大きく、よく手入れされて整っていて、適度に緊張感ある空気が漂っている。
 もう一方の姥杉は、社殿の裏にあります。

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 根元だけ撮ると個性が伝わりませんが、こちら(女杉)は、なかなか印象的な見た目をしています。
 まるで巨大な掌のようです。しかも幅のわりに指?が長く、どこかしなを作っているように見える。
 女杉……なるほどなあ、と思います。

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 樹皮もきめ細かい。
 先ほどの男杉と比べて樹齢が若いのかもしれませんが、対比させることでよりジェンダー差が面白く感じられます。
 まあ、立地が近くなかったので夫婦杉とは呼び辛かったかもしれませんね。
 西国では「夫婦」、東国では「姥翁(爺婆)」が多いという一説も、実に興味深いです。

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 女杉といえど、上部はこんな感じ。なかなか勢いがあります。
 やはりこちらの方が若さを感じます。枝折れや、やや衰えのある男杉と比べると、こちらの方が生育に安定感がありました。

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 解説板。男杉の横にあります。
 まず、よく聞く「八幡太郎」は源義家の幼名。山城国(現京都木津川市)の石清水八幡宮で元服したことからそう命名されたとのこと。
 日本の武将は似た名前が多くて正直よく間違えるのですが、「後に鎌倉幕府を開いた源頼朝と室町幕府を開いた足利尊氏などの祖先に当たる。」とのこと。
 義家サンは今後もよく出てきますので、憶えておきましょう(テストみたいだ)。

 その義家が手植えしたという伝説から、姥杉は樹齢950年余とされているようですが、さすがにそれはオーバーです。特に女杉の方は若いと思いますし、素人目には3、400年くらいではと測ります。
 それに、何故このような離れた場所に植えたか、ちょっと不可解でもありますね。
 福島の「諏訪神社の翁スギ媼スギ」も朝廷(藤原氏)の戦勝祈念ですが、ものすごくビシッと植えられていたことを考えると……。

 と、つまらない理屈を述べますが、そんなことはどうでも良い話です。
 この解説文、良いですね。
 姥杉保護の詳細が包み隠さず書かれている。処置の方法、費用額まで記されているのはなかなか珍しい。
 この巨樹たちをこれだけ大切に思って、行動する方々がいたという、それだけでもとても尊いことです。
 「幹周囲6メートル台の杉の樹勢回復処置、2本で1100万円」。
 以後、巨樹の保護に関するさまざまな重みがより具体的に想像できるようにも思われました。

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 上記の姥杉の他にも、社叢と、周囲の森がとても逞しい樹々で構成されています。
 神の近くに身を置いて心を改めたり、しっかり祈念して物事を始めたり、そういう時に来てみたい。適度な緊張感を保った、しっかりとした神社だと感じました。
 そう、そこにはやはり御神木があってほしい。心の拠り所であることに間違いはありません。


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「八幡神社の姥杉」
宮城県登米市中田町上沼八幡山51 上沼八幡神社
推定樹齢:300年以上
樹種:スギ
樹高:25メートル/28メートル(男杉/女杉)
幹周:5.6メートル/6メートル(男杉/女杉)

4コメント

to-fu  

男杉と女杉が後に「夫婦杉」と呼ばれるようになった。 ←分かる。
そして「姥杉」と呼ばれるようになった。 ←なんでやねん 笑

いやあ、いいですね。いい味出てます。
何よりもこの姥杉に関わる人々が愛情をもって接しているのが伝わってくるところがいい。
費用の可視化、私も大いに賛成ですね。具体的に○○円と言われると説得力があるし、
そんなにかかるの!?それなら少し多めに…という気分になりますから。

仰るようにこの社叢そのものが実に見ごたえがありそうですね。
拝殿の裏手のスギたちなんか肝心の姥杉の迫力を食ってしまいそうな大きさに見えます。
対の姥杉含めて、この景色を大事に守り続けていただきたいものですね。

2020/02/18 (Tue) 17:30 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

to-fuさん>
なんだかゴチャゴチャしてますよね。笑
書くの忘れましたが、1774年に一丈五尺(4.5メートルくらい)の幹周で、それから250年くらいで約1メートルほどの成長。
計測が正しいとして、あまり生育が早くないのか。しかし、そうだとすると10m超の巨杉の樹齢は大変なことになってしまうので、もしかすると今の姥杉は2代目かもしれませんね。
もしかすると、一時期失われていて、再度神木レベルに成長する間に、呼び名が混在してしまたのかもしれません。

詳細な解説文には、伝説的・神秘的な側面と、現実社会での存在感とのせめぎ合いを見ます。
観光地化していて有名な寺社は苦労しないでしょうが……そういうところは仰々しい建築やら余計なところにお金を使うパターンもあって、いろいろ考えることもありますね。笑
神秘的な範疇にまで踏み込んでいつつ今も生きている生物である巨樹も、その両方の世界を跨ぐ存在なわけで、難しくも興味深い関係性だなと思います。

杉も立派なのがいくつもあるんですが、モミも、幹周3メートルは余裕でありそうなのがいくつも唐突に生えてるんですよ。
保護林として永く伝えていってほしいです。

2020/02/19 (Wed) 08:47 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

 西国では「夫婦」、東国では「姥翁(爺婆)」・・・確かに言われてみればそうですね(無知・遅い)。
なんだったらこっちには夫婦杉などはゴロゴロしていますからね(笑)。

対となる御神木でまったく姿が異なるのが面白いなぁと思いました。
これも自然の成せる技、あるいは由緒ある神社や社叢の成せる技なのか・・・。
どちらであっても信じられる程の雰囲気がある場所ですね。

保護活動費用は思ったよりもかかるんですねぇ。
どこの自治体でも、わけわからんオッサンの銅像や誰が興味あんねんというような石碑をいくつも作ってますが、
そんなムダ金使うならこういう巨樹や文化財などの維持管理に使って欲しいです。

石清水八幡宮には行きたいと思っているんです。
神社そのものに興味があるのはもちろんですが、巨樹的にも楽しめそうなのがありますので。

2020/02/19 (Wed) 22:03 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

RYO-JIさん>
二本一対で夫婦というのも、一本が2つに分かれて夫婦と呼ぶのもありますよね。
爺婆と呼ぶにあたっては、現代の超高齢化社会と命名当時ではだいぶ印象が違うので、どうかなあ……と思うところもありますね。
我々はそういう時代に生きてるんだなと感慨深くも思います。

そうですね、姿がそれぞれ違うところは印象に残って良い点だと思いました。
これほどの差が出るというのは、何が作用してのことなんでしょうね?
単に年齢差なのか、日当たりなどの立地なのか、そもそも苗の出どころが違っていたのか。あるいは全然たまたまなのか……。
本当、巨樹の育っていく様をタイムラプスで見てみたいものですね。

確かに確かに。笑
名士の銅像はどうしてまああんなに作られたのでしょうね。教育上必要だったのか……いや、エゴでしかないと思いますね!
それもまあ、現代においては新造されなくなっているようにも思います。

石清水八幡宮、ちょっと検索してみてみましたが、さすが、見所が多いですね。
一度行っておきたいという気分にさせてくれます。


2020/02/19 (Wed) 22:19 | EDIT | REPLY |   

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