巨樹を訪ねる フルナの樅(東松院の夫婦樅)

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K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR


 福島県いわき市、「沢尻の大ヒノキ(サワラ)」に再訪を果たした後で、偶然その存在を知った巨樹です。
 樹種はモミ。「フルナの樅」、または「東松院の夫婦樅」というようです。

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 沢尻の大サワラから少し走ったところで地域の観光案内看板を見つけまして、なんの気なしに見ていたら、巨樹情報もちょっと載ってるじゃないですか。
 日暮れが近づいているので深い探索はできないが……と、あれ、真っ直ぐ進むだけで遭遇できる樹もあるぞ?
 そんなわけで行ってみることにしたのがこのモミというわけです。

 車で走っていて本当に偶然巨樹に出くわすこともありますが、こういう案内の情報も侮れません。
 あれば取り合えず見ることにしています。

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 所在地であるというお寺に到着。
 モミは裏山にあるようで、ここからでは全く見えません。
 そのためか、このすぐ隣に巨樹の解説板だけがあります。

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 それがこちら。どうやら単体の巨樹というよりは一群としての天然記念物指定のようです。
 その中でも、もちろん注目はこの「夫婦樅」です。

 お寺の門を入っていき、裏山をあおぎ見ると、なるほど、何本もの大きな樅が見えます。
 しかし、どこから登っていくのかわからない。
 一番見える場所まで行くと、そこは古そうな墓地で……すぐ急斜面なので、お墓を踏ん付けるような感じで登っていくわけにはいきません。

 ならば逆だろうと行ってみると、けたたましく犬に吠えられました。
 刺激しないように遠回りで探り……我ながら怪しい行動だと思いますが……すると、建物に隠れるようにして裏山へと続くとおぼしき石段を発見しました。

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 そこからは、ちょっとした散策路みたいな感じで登っていきます。途中で、日本仏教というよりガンダーラな風味のする仏様の銅像(新しい)があったりもします。

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 しばらく進むと、背が高いモミたちが目立ってくるようになります。確かにこれらも注目に値するほどに大きい。
 そして、その中でもひときわ大きな一本の前で自然と足が止まりました。
 これが目指してきた「夫婦樅」のようです。

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 正面に立ってみると、確かにこれは夫婦モミです。
 ここへきて、「おいおいどれが一体夫婦モミなんだよ?」と迷う方はいらっしゃらないと思います。
 が、足下には「フルナの樅」と名札がありますね。あえて違う名前がついています。

 フルナって何のことだろうと、戻ってきてから調べてみました。
 先ほどのガンダーラな雰囲気といい、このお寺の方針として読めば、富楼那弥多羅尼子、つまり、釈迦仏の十大弟子の一人とされる「富楼那尊者」のことではないでしょうか。
 「十大弟子中では最古参であり、大勢いた弟子達の中でも、弁舌にすぐれていたために説法第一と称された。」
 ……とのことです。
 並いるモミの中でもひときわ大きいという意味で、このありがたい名前をつけたのではないでしょうか。

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 解説板によれば、胸高直径170cmの雄モミと胸高直径85cmの雌モミが根で繋がっている、とのこと。
 単純に円周率をかけると、雄モミは534cm、雌モミは267cmの幹周ということになります。

 当然これは2本の株立ちとなるわけですが、解説板を読んだ際に浮かべた印象より、だいぶ合体樹に近い。
 これだけぴったりと寄り添っているので、正面に立った時のインパクトは一本の巨樹と言っても言い過ぎではないと思います。

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 ということは、単純に、自分は今、7メートルオーバーのモミを見ているということでは!?
 ……まあ、まあ、それは飛躍しすぎかもしれません(モミで7メートルオーバーというのは、全国的に見てもかなりのランカーです)。

 しかし、こうしてヒューマンスケールを撮ってみると、なかなか大した迫力があります。
 樹高は高く、葉や樹皮など健康状態も良さそうですし、巨樹好きならチェックすべき大モミとして記載すべきだと思いました。

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 で、なんというか……じっくり見ていて感じたことは、これほど仲が良い「夫婦樹」を見たことがないな、と。笑
 同日に訪ねた「諏訪神社の翁スギ媼スギ」はどこか仕事で並んで立っているような感じがしましたし(失礼)、ときがわ町の「萩日吉神社の児持杉」では、絶妙な距離感を保つことが円満の秘訣……やめましょう。

 この樹たちを見ていると、連理の度合いは年々増していっているように見えます。
 夫婦仲がどんどん良くなっている……というか、あの、ちょっとイチャイチャしすぎじゃないですか?
 
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 そう思ってしまうと、ぴったり寄り添っているどころか、肩を抱き寄せているようにも見えるし、足を絡ませているようにも……
 すみません、生まれつき想像力が豊かなもので、見ていて恥ずかしくなってしまいました。

 「フルナの樅」、稀に見る円満夫婦の樹として、もっと知られても良い……なんなら、夫婦円満縁結びのご利益があるとして宣伝しても十分理解される樹でしょう。
 そんなことを思い浮かべながら帰路につきました。
 思いがけず、最後に面白い巨樹に出会えたものです。


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「フルナの樅(東松院の夫婦樅)」
福島県いわき市川前町下桶売字 東松院
推定樹齢:600年
樹種:モミ
樹高:36メートル
幹周:5.3メートル(雄の樹)

4コメント

to-fu  

町の観光案内って馬鹿にできませんよねえ。
PCで下調べしてる時点では見向きもしなかったような場所が、あの案内板で見ると
やたら趣のある風に見えてきたりして。で、行ってみると悪くないじゃないか!という。
たまに本当のハズレもありますけどね。観光用の寺じゃなくて本当にただの寺じゃねえか、みたいな。

このモミ、100年後には完全な合体樹になっているかもしれませんね。
現時点でも角度によっては1本の巨大なモミのようにも見え、たしかにこれは見応えありそうです。
それにしてもこの方、両サイド急斜面の尾根のような位置に立っているのでしょうか。
ただでさえ手強いと評判のモミですが、このモミは特に撮影難度が高そうです。

2020/01/20 (Mon) 10:37 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

to-fuさん>
そうなんですよ。所詮……なんてすっ飛ばしてると絶対損すると気づいたので、あれば一応見ることにしています。
もともと方向音痴なので、地図はありがたいですし……笑
そうそう、行ってみたいと思わせるのも、良い観光看板の仕事ですよね。
リュック背負ってカメラ下げた旅先で、そういう看板にぜひ出会いたいものですよ。

大変仲睦まじいモミでして、根元はおろか、だいぶ上部でも連理しています。
この調子で頑張ってくれたとして、ジジイ晩年に我々が訪ねれば、きっと驚きの姿が……。
それはそうとして、今現在でもなかなか見応えあるモミであることに間違いはありません。
お寺の裏山で、たいしたことはないんですが、尾根ですね。足場はよくありませんでした。
結構無理してフレーミングをしてるので、こういう時、レンズバリエーションが欲しくなりますね。

2020/01/20 (Mon) 21:32 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

これは偶然にして嬉しい発見ですね!
これほどのモミが市指定の天然記念物に留まっているのが不思議でなりません。
単木サイズで見るとそこまでじゃなく、合体樹は反則だし、という規定?ルール?があるんでしょうね。
そんなことはともかく、私なんかはこの夫婦を見ているとワクワクします。
ええ、もちろん変な想像をしているんじゃないですよ(たぶん)。
数十年後にどんな姿になっているんだろう?完全に合体して単木に見えるくらいになったら、とてつもない存在だろうなと。
今でさえヒューマンスケールを見ていると相当なボリュームを感じます。
だからもっとイチャイチャしてくれ!って思います(笑)。
夫婦円満の象徴としてもっとアピールしてもいいんじゃないかなぁとも。

2020/01/20 (Mon) 21:33 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

RYO-JIさん>
さすがにこれは巨樹おじさんも知らねえだろう、としめしめと思っていたのですが、帰って調べたら、しっかり探訪済みでした。笑
上部まで太いまま立ち上がっていて、やっぱりモミと言ったらこの形ですね。
しかもこうしてパートナーが密着しているので、特筆すべきボリューム感があります。
数十年も順調にいけば、天然記念物としての評価も変わってくるのではないでしょうか。
RYO-JIさんのいう通り少なくとも県天以上にされて、かつ夫婦円満のご利益で有名になっていても全く不思議ではありません。
仲良いことは良いことですよねえ。樹も人間も。ほんとに。

2020/01/21 (Tue) 09:17 | EDIT | REPLY |   

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