巨樹を訪ねる 津金沢の大杉

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K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR


 その道中、その巨躯から受けた衝撃のあまりに「松保の大杉」を先に取り上げてしまいましたが、山形県の巨樹探訪、続いていきます。

 季節は夏へ戻りますが、勝手知らぬ山形、まずは山形市近郊に巨樹があったらわかりやすいな……と、探したら、ありました。
 山形駅から見て、南へ数キロ。市街地からもさほど離れない。
 まあ、ちょっとばかり狭い集落の道を入って行きますが、「津金沢の大杉」に辿り着くのはそう難しくはありません。

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 道はかなり狭いところもありますが、神社の敷地には停められるスペースがあるので安心です。
 ねじり幹の桜と、なんだか変な格好のオブジェがお出迎え、その先に長い参道が続いています。

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 この先にあるのは熊野神社らしいのですが、さっそく東北らしい風情を感じる風景だなと。
 東北まで来りゃ夏でも涼しいんじゃないか……と、そのくらいが一般的な関東民の考えることでしょうが、暑いんですよ、山形。
 暑いことは日本中暑いですが、なんというか、質がちょっと違う。ぐらぐらと煮え、陽炎が揺らめくような暑さ。
 聞けば、熊谷などがのさばる前には日本で最も暑かったのは山形市だったそうで。
 夏は暑い、冬は寒くて大雪。まったくひどいすごいところです。

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 そうして行った先、神社への最後の石段の手前に、大杉がありました。
 この道行でのヒューマンスケールが最も絵になると思います。
 いかにも山形らしい風景と、その中の大杉。そう思いました。

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 「津金沢の大杉」。山形県天然記念物指定です。
 遠景からもご察しの通り、深い日本海側に多い裏杉の特徴をよく表しており、ごつごつと節くれ立って不規則なシルエットになっています。
 この樹の場合はそれでも一本の根元から立ち上がって高く伸びているところを見ると、ある程度御神木として管理され、暴れることがなかったのだろうと見えました。

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 目通り幹周囲は8.8メートルとのこと。
 8メートルを超える幹を至近で眺めると、やはりかなりの迫力があります。
 根幹部分は、雲や波が地中から湧き出しているかのようにも見えますね。
 根張りはほとんど明らかではなく、唐突な感じ。
 このパターン、もしかしたら少し盛土されてしまったのかも。

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 見上げれば、樹高もなかなか高く、まぶしい夏の日に目が灼かれます。
 30メートル以上はあるとのこと。
 葉はもこもことした感じで、塊が濃いタイプですね。

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 石段を登って、熊野神社にお詣り。
 静かな境内でしたが、それなりに訪れる人はありそうです。
 深く入った先で開ける土地のためか、なんだか居心地よく感じる場所でした。
 そこから振り向くと、

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 こんなふうに、またずいぶん唐突に大杉が見えます。
 根幹部分はフェアじゃないですが、ここから見ると枝の様子がよくわかる。
 下の方からも大きめの枝が付いていますが、不格好で、いかにも雪の影響で折れたと見えます。
 折れながら、常識外れに垂直に立ち上がっていく……裏杉の一生が形になっているような幹姿です。

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 ウロもあるらしく、ミツバチが巣を作っているようでした。
 綺麗な表杉ばかりを見てきたら、不細工な杉だなあと思ってしまうかもしれません。
 が、本来野生の顔を覗かせる杉というのはこのような外見なのであり、さらに輪をかけて野獣のような連中もたくさんいる。
 逆に、雪と山の国に育ってそんな大裏杉ばかり見て育った人が、関東で定規を当てたような表杉を初めて見たらどう思うだろうか……。
 暑い山形でこの幹を眺めながら、なんとなく、そんなことを考えました。

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 解説板。
 弘化2年とは、1847年とのこと。
 その頃にはもう崇められるような大杉だったということであれば、250年から300年の樹齢は最低保証されそうです。
 推定樹齢は、よくあるように1000年とのこと。

 対になるもう一本の杉があったらしいが、伐ったら祟った。
 巨樹のタタリで伝染病が蔓延するというのも民話の一つのパターンですが、理解しがたく治療も効かないパンデミックこそ、当時の最も恐ろしい災厄だったに違いありません。
 その中で……今と同じ姿だったかはわかりませんが……この杉の荒々しい姿も、またいっそう恐ろしげに映ったことでしょう。
 大きさではさほど目立たない……なんて、9メートル近いなら関東では代表選手クラスですが、それよりも性質・特徴をもって、いかにも「今、自分は東北で巨樹を見ているのだ」と実感させてくれる一本でした。

 汗まみれでしたが、巨樹探訪の後は、山形市内でおいしい牛肉を買って帰りました。
 山形人は牛肉ばかり食っているそうですよ。
 そして、そば屋でラーメンを食うとのこと。笑


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「津金沢の大杉」
 山形県山形市大字津金沢 熊野神社
 樹齢:300年以上
 樹種:スギ
 樹高:33メートル
 幹周:8.8メートル

4コメント

to-fu  

いかにもな雪深い地方のスギですね。
枝のうねり具合から険しい冬の様子が伝わってきて、写真からもその迫力が伝わってきます。
石段を登ってシルエットがチラ見した瞬間の興奮を想像するとこっちまでテンションが上ります。
葉の付き方がちょっと高知の牡丹杉っぽいなと思いました。モコモコした感じが。

それにしても山形市内でいきなりこのクラスの巨杉が出てくるなんて…
本当に羨ましいところを攻めてますねえ。東北の奥深さには驚かされます。

2019/10/31 (Thu) 10:20 | EDIT | REPLY |   

狛  

to-fuさん>
茨城だと、相当北まで行ってもピターっとまっすぐなスギばかりですから、ここの冬はどうなってしまうんだろうと秋からもうプレッシャーを感じますよね。
石段からのこのご神木ぶりは、なるべくしてなったという構図の美しさがあると感じました。
やっぱり杉の巨樹はこうでないと。嬉しかったですね。
写真を見返していて思い出したのは、僕も牡丹スギでした。
生育条件が似ているのでしょうかね。

山形のリサーチをちびちび進め、行動開始していますが、古くから都市化された宮城とは全然違います。
ちょっと度胸試しもありますが、刺激的です。

2019/10/31 (Thu) 16:53 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

このクラスが市街地にあるところが東北地方の懐の深さだなぁと驚きました。
もちろん山間部を突き進めばモンスタークラスがあるんでしょうが、これだけでも充分見応えありますね。
同じ幹周でもオモテとウラではまったく別種と思えるくらい印象が違いますし、
どちらかと言うと太平洋側の民としてはウラスギの方に惹かれますね。
このスギもその特徴を備えていて、一度見てみたい雪の中のウラスギに立地的に丁度良いかもしれません。
とか言ってそう簡単には山形行けないのですけどね。
雄杉が伐採されたのが悔やまれます。
雌雄揃っていたら一気にメジャーな存在になっていたでしょうね。

2019/11/02 (Sat) 21:02 | EDIT | REPLY |   

狛  

RYO-JIさん>
市街地から外が広すぎる東北ですが、山形は歴史も古いですし、こういう巨樹も町から遠くないところにあるんだな……というのがやはり印象ですね。
僕も、果たして巨樹探訪趣味をやっていなかったら、ウラスギというものを……まあ、見ることはあったにせよ、ここまで魅力を知ることができただろうか? と思います。
それくらい特異で、迫力がありますよね。
山形は雪が降りますからねえ。真冬は怖くて行ける気がしませんが……どうだろ。笑
一対そろっていたら……というのは想像するしかないですが、もう一本の姿も荒々しかったでしょうし、仁王像のようでしょうね。

2019/11/04 (Mon) 17:06 | EDIT | REPLY |   

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