巨樹を訪ねる 壇の大クス

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K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 徳島市へ向かいつつ、点在する巨樹を巡ります。
 調べてみると、徳島は佐賀や福岡に負けず劣らずのクス王国と言えます。
 しかし、実際に訪問できる数は限られているので、どのクスを回ろうかと……目移り。

 結局は誰もが似たようなラインナップで巡ることになってしまう気がしますが、先の「別所の大クス」「加茂の大クス」に次いで、見逃すわけにはいかないクスのひとつが吉野川市の「壇の大クス」です。

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 前日までの山中行から比べれば繁華街もいいところ(注:実際はそうでもないです)な地域をちまちま走っていきます。
 平地なので、崖から落ちて爆死する危険は皆無なものの、市街地ならではの混雑や事情には気を付けねばなりません。
 もうじき到着というところで、道路工事のため大きく迂回。

 もしかしたら大クスの周りの道路が全部バツ印じゃないか? と訝しんでいると、さらにでかい不安が追い打ちをかけます。
 知らない番号から電話。出る。
 「東九フェリーですが……大きな台風がきておりまして、今日の、東京港へ戻る便が欠航するかも……」
 まあ、それは自分のせいではないし……いや、自分の日頃の行いが悪いのかもしれませんが……聞かなかったことにして。

 道の方は、地図をよく見ると他のルートがある。ここも四国山地とは違う。あそこは地獄の一本道でしたからね。
 小高い丘のような地域になり、車を停めて細い道を登っていくと、頂上に大クスが待っていました。

 坂道を登りきったところで、巨大な象がこちらを見つめて待ち構えている……。
 そう書けばかなり幻想的なシーンですが、その感じ・気分を実際に味わえてしまうのが巨樹探訪の醍醐味です。

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 「壇の大クス」。
 幹周10メートルという数値に終わらず、この重量級の単幹の迫力は相当なものです。
 勢力旺盛なクスは、ともすれば株立ちになってしまい、数字だけで判断して見に行くとちょっと見当が外れることもあります。
 あれ? 樹を見にきたはずなのに林を見てないか? というような。

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 そんな中で、こうしてちゃんと一本の巨大な樹としてのクスに出会えると、この地には何か特別な栄養成分が水脈のように流れているんじゃないか? と想像してしまいます。
 昔の人はそれを土地や人物の霊力だと考えたのでしょうね。

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 樹というよりは、まさに鯨か象か、もしくは大型の滑り台とか鉄筋コンクリートの塊感ある建造物のような存在感を感じます。
 クスの重々しくも柔軟性と躍動感に富んだフォルムが、そう思わせるのでしょう。

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 低い位置から横方向に突き出した大枝がまた凄まじく太く、まるで金床のよう。
 この幹との取り合い部分の量感、力の入り用が、なんともすばらしい。
 見応えあるクスです。

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 横方向に伸びた大枝から、また細い幹のような縦の枝が立ち上がり、それが分岐して葉をつけています。
 気温がどんどん上昇し、この樹の元で一枚脱いだくらいですが、クスの細かい葉の繁りの下は本当に涼しい。
 しかし、この樹冠も、09年に全く葉を失ってしまうという事態に見舞われたそうです。
 原因はよくわからず、これほどの巨樹と言えどもやはり生き物なのだ……と、限りある命を感じずにはいられません。

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 よく参照させて頂く先達の方の訪問記録ではその翌年の10年に訊ねられており、この樹の命の終わりが近いのではないかと心配して書かれていました。
 が、樹木医の方の手当ての甲斐あってか、どうやら持ち直したようです。
 千年も生きるとはいえ、限りある命を宿しているからこそ、その時々に感じさせるものが全く違う。
 こうした過去の記録などを読めるのもありがたく、興味深いことだと感じます。

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 一歩引いてみると、枝張り面積がかなり大きいことにも気づきます。
 枝は先の方まで行っても、並の樹木の幹ほども太い。
 ものすごい重量でしょうが、奇妙な樹形に見えて、うまくバランスをとっているようにも思えます。
 それでもやはり幹の塊感には圧倒されます。

 丘の頂上で、市街地を一望できる清々しい場所に立っているのもまた印象深い。
 多くの通行人や街の人が、この樹を目印にしたのではないでしょうか。
 そんな場面を想像できる光景が魅力的でした。

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 解説板。
 計測箇所が地上1メートルと、規程とはちょっと違いますが、寸胴な体型のため、実測でもそれほど変わらなかったようです。
 側にはお社があり、さらにちょっと離れたところに本体があるようですが、「康頼神社」といい、この地に善政を敷いたとされている平康頼(たいらのやすより)を祀る神社とのことです。
 この大クスにも、平康頼が植えたとされる伝説があるそうです。

 並いる強者ばかりを巡ってしまい、感覚が麻痺している懸念があった探訪でしたが、その目を覚ましてくれるような大クスでした。
 周囲の清々しさもあって、また会いに来たい樹だと、ポジティブに感じることができました。


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「壇の大クス」
 徳島県吉野川市鴨島町森藤字平山
 樹齢:950年
 樹種:クス
 樹高:24メートル
 幹周:10.2メートル

4コメント

to-fu  

このクスは正面左側の大枝が非常に印象に残ってますね。
真下に立つと潰されるんじゃないかってくらいの圧迫感が如何にもクスらしい重厚な塊感。
あんな大枝が支柱も何も無しに自立してるって凄い。ほとんど真横にせり出してるのに。

あとはとにかく見晴らしが素晴らしかった。自分が訪れたのがちょうど雨上がりで、
これからの旅路が良いものになるだろうという予感でワクワクしたのを覚えています。
それでもやはり晴れの日に訪れてこそ真価が発揮されるクスだと思うので、是非とも
次回は私も晴れの日に訪問してみたいものです。

それにしてもクスを見てしまうと徳島に行きたくてウズウズしてきますねえ。
真冬でも立派な姿が見られるんだよな、と思うとまた無謀な計画を立てたくなるので困ります。

2019/10/09 (Wed) 21:06 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

to-fuさん>
塊感がすごい迫力のクスでした。
アンバランスなスタイルもきっとあるんでしょうけど、もっと大きいものを見たはずなのに、のしかかられるような感じはそれらよりも強かったように思います。
写真で見てみても、この枝の付け根の力み具合はすごいなあと。

なんだか素敵なところでしたよね。映画の一場面にでも使えそうな。
僕の時も朝寒くて、写真ではトレーナー着てるんですが、ここでぱーっと明るく、暑くなってきました。
そういう風景や気象がよく似合います。

確かに、確かに。笑
クスは関東や東北では少数派ですが、冬でも落葉しないんでしたね。
走っていけば大クスを拝めるそちらはうらやましいです。
冬……今年の冬はどうしようか、あー、それがまた課題だなあ!

2019/10/10 (Thu) 16:50 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

あの加茂の大クスのせいで陰に隠れがちですが、徳島はクスノキのレベルがめちゃくちゃ高いですね!
これなんて関西にあったら一線級ですもの。
根元付近の重厚な存在感から只者ではないとわかります。
興奮と共に思わずニヤけてしまいそうです。
巨大な肉の塊を目の前にした時のように嬉しくなってしまう感じと同じです(笑)。

to-fuさんの記事でも思いましたが、その立地がまた素晴らしいじゃないですか。
薄暗い場所にある野生的なクスも悪くないですが、やはりクスはこうでなくてはいけません。
ドシっと日の当たる場所で堂々と存在していて欲しいのです。
個人的にこのクスだけでも徳島再訪の価値があると思いますね。

2019/10/11 (Fri) 21:16 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

RYO-JIさん>
まったく同感です! 平均値がバカ上がりしてしまってるんですよね。
わざわざ見に行く価値があるクスの巨樹がわんさと存在しています。
このまま鈍った感覚で流し見するのはとても惜しい。
気に入ったものを掘り下げたり、じっくり時間をかけて見て、周囲の方々に一言ずつでも言葉を聞いてみるなどしてみたいものです。

この眺めの前に出た時には、思わず腕まくりして駆け出したいような気分でした。いや、駆け出しましたね。
前日あれだけ巨樹をたくさん見て、多少疲れもあったというのに。
徳島はいつも参考にさせてもらってるリストなどを見ても、すぐに次のルートが決められそうですね。
割合近くにお住まいなのが羨ましい!

2019/10/12 (Sat) 09:23 | EDIT | REPLY |   

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