巨樹を訪ねる 加茂の大クス

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K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 恵まれし国・徳島県の巨樹めぐりにおいて、何がなんでも、決して外すわけにはいかない1本はどれか?
 関東の平凡民からすれば、ここまで見てきたどれにしても到底無視するわけにはいかないのですが、やはりこのお方を外しては本末転倒というものでしょう。
 そうだということが、計画段階からありありとわかっていた巨樹がありました。

 「加茂の大クス」。
 「石徹白の大杉」「東根の大ケヤキ」などとともに、単独樹木では6件しかない国の特別天然記念物に指定されている、特大級の大クスです。

Pasted Graphic 19

 すごく有名な天然記念物であるので、所在地を調べるのに苦労はしません。
 市街地に近い、平坦でひらけたところにあるので、数百メートル先からでもその姿が見える。
 もちろんその時点で興奮の度合いは急上昇するわけですが、それゆえに道を間違えてしまいました。
 
Pasted Graphic 20

 周囲は田んぼに囲まれているので、全ての道がつながっているわけではなく、何度か曲がって進むと、思いがけずクスの真ん前に出てしまいました。
 そのまま進めますが……見える樹冠は際限なく巨大になり、ぐーっとそれを車でくぐるような状態に!
 うわっ、こんなにでかいのか!?
 車中であんぐりと口を開いてしまいました。

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 正面側の駐車スペースで車を降り、ほとんど無言で、一直線に撮影に向かっていました。
 これはもう、なんというか、仕方ない。

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 ……が、すぐに途方に暮れました。
 とんでもない樹です。
 一瞬で呼び寄せられた反面、我々はすぐに呆然と立ち尽くすことになってしまいました。

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 意味もなく少し距離を詰めては、また撮る。
 どうしてもそんな、無為な繰り返しになってしまいます。
 巨大過ぎて、ディテールを見られる距離では全体像がちっともフレームに収まらないのです。

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 仕方もなく、ぐるぐると周囲を撮り回る。
 この樹のために県が周囲の土地を買い上げて管理しているそうで、遮るものもなく、実に気持ちよさそうにのびのびと育っています。
 
 道の上を枝が悠々とまたぐ。
 周囲が開けているために比較対象がありませんが、枝張りは50メートル以上にも及んでいます。

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 衛星画像で見るとよくわかりますが、どの方向から見てもこんもりとしていて、「最長部で50メートル」というということではないところがものすごい。
 ほぼ、どこで測っても50メートルの枝張り長を叩き出す……こんな樹が他にあるか!? と唸るような規模です。
 これがただ1本の樹のなせる技なのです。

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 とにかく超巨大。
 ですが、とんがったところがない。
 大らかすぎるほどに大らかで、この先1000年も安心して見ていられるような安堵を与えてくれる存在でした。
 それはやはり、我々が100年にも満たない寿命で生きる生き物だからでしょうか……。
 何回か生まれ変わっても、ここへ来さえすれば、変わらぬこの樹に会えるような気がします。

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 間違いなく、これまで見た巨樹の中で最大の樹冠を有していました。
 広がりも、奥行きも、高さ方向にも大きい。そして深い。

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 「一個の森のようだ」とは、よく巨樹を例えて言う言葉ですが、この樹冠を覗き込み、夢中で撮っていると、自分が大海の中にいる小魚であるかのような気分になってきます。
 嬉々として集まっていた鳥たちこそ、まさにそんな気分で、この樹の中を「泳いで」いたことでしょうね。

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 しかし……いやー、まったく……

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 大変に素晴らしい、日本全国に、いや、世界にも誇れる巨樹だと思うのです。
 が、あまりにも巨大過ぎ、とてもとても、この樹の全貌を捉えられるとは思えないのです。
 お手上げ……関西のお二人も「あかん」とか言ってましたが笑、まさにそんな感じです。

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 もっと写真うまくなりたいなあとか、そういう以前に、相手が途方もなさすぎて立ち尽くしてしまいます。
 この樹の本質をバッチリ捉えることができた……なんてのは、果たして何百回訪ねて、何十年費やせば果たせることなのやら。
 これは、ある意味では富士山に通じる感覚ではないかと思います。
 究極存在感みたいなものをまとっている数少ない存在なのではないでしょうか。

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 本当に、途方もない巨樹です……。
 案内板の表記では、目通り幹周囲は13メートルということになっていますが、ほんとにこれ13メートルしかないのか? と、見れば見るほど、三人で訝しんでいました。
 おそらく、それ以上は確実にありますね。
 樹齢は推定1000年。
 巨大さでは納得しつつも、あくまで活発な生命感を誇っていて、もっと若そうにすら思えました。

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 うーむ……。
 こうして編集しながら写真を見ても、ため息が出ます。
 現地で打ちのめされた圧倒的巨大さがいまいち伝わらないと思いますが……この日は、神社(若宮神社)祭礼の準備のために作業されている方がおられました。
 その方の自動車と比べていただいた方が、いつものヒューマンスケールよりも適当かもしれません。
 いやはや、めまいがしますね……。

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 解説版。
 上記のように、とても13メートルほどの幹周とは思えません。
 この測定値がいつのものなのか、明記が欲しいものですね。
 樹勢が衰えつつある樹ならまだしも、この大クスはまだまだ現在進行形で巨大化し続けているように感じました。

 まさに「特別」天然記念物の名に疑いなし!
 と、感動を感じる巨樹でありながら、あくまで「神様」ではなく、人の営みの近くにあってずーっと愛されてきたのだという表情を持っている。
 このくらいの存在感になると、これを中心としたコミュニティが自然発生して当然だよな……とも思います。

 加茂の大クス。
 徳島へおいでの際は、どなたも一度はお立ち寄りいただき、実物を是非ごらんになって仰け反ってください。
 偉大な、同じ国に住まう者として誇りたい、完璧な巨樹でした。


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「加茂の大クス」
 徳島県三好郡東みよし町加茂
 樹齢:1000年
 樹種:クス
 樹高:25メートル
 幹周:13メートル以上

4コメント

to-fu  

今回の二大目的地の一つですね。
大阪の「野間の大ケヤキ」が幹周14m。
あの巨樹は精緻に測定されていると思うのですが、このクスは間違いなく野間の大ケヤキより二回りはぶっとい。
少なくとも幹周16~17mはあると思います。下手したらもっとあるかも。
特天ともなると専門家といえど易々と近付けないのかもしれませんが、是非とも再測定していただきたいですね。(本当は我々でやりたい 笑)

いやー、とりあえず撮るわけですが、珍しく「写真はもういいか」なんて思ってしまいました。
どう撮ってもただデカいクスにしか写らないし、あの場の良さは現地で感じるしかないのだなと。それこそギャフンと言わされました。
そよ風でクスの葉が擦れる音だとか、あれはもう目だけでなく五感をいっぱいに開放して初めて感じられる心地良さでした。
まさに特天。国の宝だと思います。

2019/07/29 (Mon) 07:20 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

はぁ~、改めて見てもスゴイとしか言いようがないクスですね。
現地で写真を撮りながら、『あかん、こんなん写真ではどうやっても表現でけへん』と思ってました。
ここまで撮ることの意味を疑問視した巨樹は初めてだったかもしれません。
だってねぇ、もう遠く離れたところからバシッと撮るくらいしかできなかったんですもの(笑)。
そんな無駄な足掻きをする暇があったら、適当なところに寝転んでボーっとしてた方が有意義にすら思えます。
幹周は私も13mなんてもんじゃないと感覚的にわかりました。
健康そのものであの幹周ですから、これから先はどこまで成長するのやら。
でもそれよりもあの見ていて気持ちいいと思える感覚は桁違いに凄かったです。
もうこの一本だけで徳島県が羨ましいと本気で思います!

2019/07/29 (Mon) 21:39 | EDIT | REPLY |   

狛  

to-fuさん>
間違いなくツートップでしたね。
僕も九州の巨大クスと比較して考えていましたが(というか九州では水増しだろ? というのも見かけましたが笑)、それにしても加茂の大クスが13メートルというのは少なく見積もりすぎですね。
おそらくは計測が古いんじゃないかな……と。
我々で測れるのであれば……いやしかし、3人ではとても無理ですね、これ。笑

同感、なのであまり写真にも熱意が感じられないような気も、自分でしています。
それじゃイカンだろ! ともいえるのですが、そう指摘できるのは加茂の大クスの元に行ったことがない人じゃないかな、とちょっと思いますね。
今後、四国に行くならまたぜひ立ち寄って挑戦してみたいところでもあります。

2019/07/30 (Tue) 08:51 | EDIT | REPLY |   

狛  

RYO-JIさん>
整った形をしているので、写真をパッとみかけただけでは刺激が足りないな……とも思うかもしれないんですが、編集しながら改めてじっくり見てみると、うわこれとんでもねえな! と仰け反りました。
RYO-JIさんと同様に、撮影途中からさじを投げてました……。
某カレンダーへの応募にせよ、存在から言えば完全にアリですけど、写真を見ていると、ああこれじゃあダメよね……となってしまう。
そう、その存在を切り取るとか持ち帰ろうとか、そういうこと自体がおこがましいのかもしれませんね。

確かに、この樹のために徳島へ行ったってなんの不思議もないですね。
まあ……そしたら、それだけじゃ済まないんですけどね、もちろん。笑

2019/07/30 (Tue) 09:03 | EDIT | REPLY |   

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