巨樹を訪ねる 上野村の大ジイ 再訪

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K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 房総半島にはシイの巨樹が多い。
 ほとんどスダジイ王国と言っていい……他の樹種の勢力を押しのけるようにして幅をきかせています。
 クスを見るよりスギを見るよりシイ、シイを見て楽しめればこの半島は巨樹の楽園です。
 (逆を返せば、クスもスギもあんまり見られない土地なんですがね……)

 その房総大シイ軍団の中でも、ぜひとも押さえておきたい巨樹の一本がこの「上野村の大ジイ」です。
 日蓮聖人が説法を行なったというお寺にある、別名千年シイともいう存在です。

前回、2016.8の探訪記事はこちら

 前回訪ねた際にはフルサイズのデジタルカメラもなかった。
 存分に撮って、この迫力ある樹をぜひともしっかり写真に捉えておきたいと願っていました。
 今回、房総の早い春に再訪してきましたが、のっけからヒューマンスケール写真。前回はなかったですからね。
 そう、改めて見ると、こんなにでかいんですよ!
 太さだけでなく、高さも枝張りも堂々としている。
 シイでこれほど高く立ち上がっている巨樹というのも珍しいように思います。
 ほとんど、これ一本でシイの森のような存在感です。

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 実に凄みのある老巨樹です。
 前回撮った写真を傍に置いてみて気づくのは、樹冠の盛り上がりがちょっと薄くなったのではないかということ。
 しかし、これにワケがあることにすぐに気づきました。
 
 以前の写真に写っている樹冠……その1/4ほどが、実は幹の分岐あたりから大きく育ってしまった他種の着生植物のものだったのです。
 それは前回の訪問時に気づいていたのですが、今回確かめてみると、それがない。
 したたかな着生植物が勝手にいなくなるわけがないので、これは人為的・外科的に取り払われたということです。
 緑色は多少減りましたが、ああよかった……と胸をなでおろしました。 

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 近づくにつれ、その姿がすさまじいディテールの塊であることがわかります。
 もちろん、この樹を撮影したデータを拡大してもそんな感じを得ますが、実物を肉眼で見ても圧倒される。
 痛々しい、グロテスク、不気味、醜悪……いろんな負の印象を受けると思いますが、それらをまとわりつかせて、中心にドン! と巨大な存在感がある。
 これぞスダジイの巨樹だなと思いました。

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 大枝が欠損している。
 しかし、勢いは失われることなく、樹という命の激しさを見せつけてきます。
 見ていて、エキサイティングなんですよね。
 植物じゃなくて、恐竜とか……もっといえばドラゴンみたいなモンスターを目撃して撮っている気になってくる。
 シイの巨樹独特の感触なのですが、角度や距離を変えるたびにシャッターを切りたくなってしまいます。

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 周囲には、ひと抱えもありそうな枝の残骸がゴロゴロ転がっています。
 すぐそばで見ていて、頭の上にこんなものが落ちてきたらひとたまりもない。
 樹の方だってダメージでしょうが、あまり気にしている感じでもなさそうに見えるのがすごい。

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 幹周7.3メートルだって? ……あれはウソだ。
 なんて、いや、実測できていませんが、おそらくは一番細いところを測っていますね。

 その全体において、何百年も生き抜いてきた証、傷や汚れ、生命の生々しさで覆い尽くされている。
 なんてすごい被写体なんだろう……と、こちらも胸を熱くせざるを得ません。
 試行錯誤し、どうやったらベストにこの有様を撮ることができるか……と挑みます。
 その結果、三脚を持ってものすごく細かく移動しては、超重容量のRAWデータを何枚も残すことになって。
 写真1枚200メガですよ? バカなんじゃないかと。笑
 でも、やりたくなるんですよ! それで挑むべき存在が目の前にいるんだもの。

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 派手に欠損した大枝の部分も、個人的には好きです。
 この満身創痍感、自分の内部に死を抱え込みながら何百年も生きる凄まじさ。
 この樹はこのままずっと生きつづけて、ある日、轟音を立てて崩れ落ちるのでしょう。
 ぐずぐずに崩壊したとしても、まだその状態で生きているような気がする。
 それはおろか、完全に木屑に還ったとしても、まだそこに巨大な気配がそびえ立っているような気がする……。
 そんな樹なんじゃないでしょうか。

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 巨樹を撮っててよかった……そう実感させてくれる存在です。
 2度目だというのに、今回も1時間以上、夢中で撮ることができました。
 スダジイファン(?)を自称する方は、絶対に一度訪ねてほしい巨樹です。
 ここ周囲の山深い急カーブが多い感じや、勝浦の海に降りていく感じは、ドライブとしても上々に楽しいですしね。
 また訪ねさせてもらうと思います。 


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「上野村の大ジイ」
千葉県勝浦市 寂光寺
樹齢:800年
樹種:スダジイ
樹高:24メートル
幹周:7.3メートル

4コメント

to-fu  

え?これシイなんですか?なんて、パッと見た瞬間はクスか何かかと勘違いしてしまうようなサイズですね。確かに幹を見るとこのグニャグニャした感じはいかにもシイらしいんですが、これをシルエットクイズにされたらシイだなんて気付けないと思います。さすが暴走…いえ、房総。シイにスギ、あと巨大ビャクシンもありませんでしたか?房総半島一周は僕からすると関東の方が和歌山をぐるっと一周するのに匹敵するくらいの覚悟が要る行為ですが、こういうのを見せられちゃうとそれこそもう暴走してしまいたくなりますね…いえ、別に車は暴走させずに安全運転で…あくまで覚悟を暴走させるだけですが。

しかしこの着生植物さん、それこそヤドリギなんてレベルじゃないくらいゴッソリとシイの身体ごと引き剥がしてると思うんですが、こうして見比べても樹勢に影響が感じられませんね。多少のダメージはあったんでしょうけど、その傷部分からもドングリが芽を出して次世代の幹に変えてしまうんでしょうねえ。シイの寿命というのもいまいちよく分かりませんが、この方からは不死の生物じみた貫禄を感じます。このちょっと怖さにも似た凄みこそがシイの魅力ですねえ。

2019/04/13 (Sat) 16:49 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

うん、やっぱりヒューマンスケールは大事ですね!
前回の写真よりも一層その大きさがよく伝わってきますもの。
そして幹周7.3mはあまりにも控え目な数値じゃないでしょうか。
この世界はちょっとくらい(というかめちゃくちゃ)盛ってしまうのが当たり前なのに・・・。

to-fuさんと同じように、シイではなくクスのような印象を受けますね。
着生生物がなくなってちょっと健康的になったような。

2019/04/13 (Sat) 22:41 | EDIT | REPLY |   

狛  

to-fuさん>
前回の訪問時はまだ僕も比較対象があまりない時期だったと思います。
特にシイを見た経験があまりなかったので、でかい樹だなあくらいに思っていましたが、こうして戻ってきてみると結構なものですよね、これ。
安久山の大ジイは絶対入るはずですが、千葉のスダジイベスト3ということになれば、この樹も入ってくるのではと思います。
ツバキやカエデの仲間だろうと思うのですが、かなり貪欲な連中が着生して繁茂していましたが、取り払われてすっきりしましたね。
心配ごとが減ってまた寿命が延びたわい、とか言ってそうです。

千葉県というと東京の隣だろと、まあそれもそうなんですが、江戸川と利根川で切断されてると考えると巨大な島ですからね(それは大げさ)。
一周すると600キロあるとも言われており、真ん中はけっこう山道が入り組んでます。
風景もいいし、じっくり腰を据えて楽しみたいところ。
このシイ含め、ぜひto-fuさん、RYO-JIさんにもいつか見て頂きたいものです。笑

2019/04/14 (Sun) 08:05 | EDIT | REPLY |   

狛  

RYO-JIさん>
そうそう、その発想自体がなかったし、これを補完したいという気持ちがずっとあったんですよね。
こうして見ると、7メートルと言ったって、一番細いところを測ってる、損してると言わざるを得ないですよねえ。
もちろん、現場で感じる大きさというのはもっとずっと大きい。
そして、スダジイの単幹のものでここまでの大きさのものというのはなかなか珍しいようにも思います。
環境が良かったんでしょうね。

ディテールがグロくて素人受けが悪いところがクスと違うところですが(笑)、房総半島においてはクスを押しのけて占有的です。
着生植物の除去など、こういう変化があったことは全然知らず、現地でも明示されていないのですが、嬉しいですよね、こういうのは。
あきらかにさっぱりしてますもんね。

2019/04/14 (Sun) 08:18 | EDIT | REPLY |   

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