巨樹を訪ねる 澤大櫻

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K-1 , K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 春のこの時期が来ると、近年では並木をなすソメイヨシノよりも、巨樹としての風格を見せるエドヒガンなどを見にいくことが多くなりました。
 桜にはもちろん華やかな春の色を期待したいですが、巨樹としての桜を意識した場合、それと同時に「渋さ」という要素が確実に存在していると思います。
 毎年見に行っている「長光寺のしだれ桜」「三春滝桜」は、華やかさの面だけで見てもかなりのものがありますが、よく通る道の傍ら、すごく「渋さ」で訴えかけてくる桜の巨樹があります。
 千葉県香取市の道路中央分離帯にある「澤大櫻」、ヤマザクラの老巨樹です。
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 最初にお断りしておくと、この咲いている写真は去年のものです。
 この樹が倒壊してしまったとかそういうことではなく……反対に、今年も同じように咲いていたので、安心して写真を使っています。
 立地が立地であるので車を停めることができず、仕事に行く途中だったので、通り過ぎねばならなかったというところです。
 桜はワンチャンスなので……申し訳ない。汗
 花の様子は一枚目をメインに見ていただくとして。

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 この時は8分咲きくらいですが、満開と呼べる時期でも、高齢ゆえかあまりボリュームが出ません。
 ヤマザクラなので、花と同時に葉が出る。
 その色が混じるのもあるでしょうが、毎年見ていて思うのは、どことなく花の色が濁っているような、くすんでいるような印象です。
 実際にはそんなことはないのかもしれないし、日陰ができやすい周囲のせいもあるかもしれません。
 しかし、そういう印象を毎年抱き、それがゆえにこのヤマザクラを個性的に感じます。
 決して、それが残念だという話ではない。
 それがすごく「渋さ」を感じさせ、貫禄あるなあと思っているのです。

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 老樹としての貫禄、渋さ。ヤマザクラゆえの野生味。
 それらがあるために、この桜は、咲いていない冬でも心を惹きつけるものがあります。
 ここからの写真は、今年2月、こちらでは1年に1度あるかという雪の日に撮った写真です。
 積雪が長く伸びる枝を縁取って、ああいいなあ、絵になる……と、思わず立ち寄ってしまいました。

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 大桜があるのは、道路の中央分離帯です。
 もちろん、もともとこの桜があったところに道路が通ったという順番ですね。

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 隣にはセブンイレブンがあり、たまに立ち寄っては、コーヒーを買い、ポケットに手を突っ込んでフラフラ歩いて桜の調子を見たりしています。
 今年の花の具合を撮れなかったというのも、お昼時は駐車場がいっぱいで停められなかったというシンプルな理由で。
 ほんの少し行くと、香取市の豊かな酪農資源を扱う「恋する豚研究所」もあります。
 「なんでこんな辺鄙なところに作ったんだろ?」と思ってたら、あれよあれよと目の前に新しい道路が建造され、行政との癒ちゃ……いえいえ、なんでもありません。笑

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 2つに分裂した幹がそれぞれ2又になって重なっているような形をしていて、幹周の計測は難しそうですが、4メートルほどはあるのではないでしょうか。
 近づいて観察してみるとなかなかの大きさです。
 枝張りも広く、対岸の電線に接触しないか心配になるほど。

 色彩的に地味なために咲いても花見客などはぜんぜん集まりませんが、そんな姿をこそ見て、巨樹が好きでよかったなあとしみじみ思うのです。
 華やかなピンク色だけが桜ではない。ましてや花だけでもない。
 ここにこうして、何百年も凛として立っている樹もあるということを意識して親しむことができるわけですから。 

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 足元に解説の碑があります。
 ここはもともと澤村という村だったようで、元禄の頃日櫻聖人という方が、村の東方の真浄寺に枝垂れ桜を、西方にこの山桜を植え、この間を信仰浄土の地とした、とありますね。
 検索してみると真浄寺は現存しているらしいですが、巨樹として枝垂れ桜がある様子は伺えませんでした(今後調査してみます)。 
 一方で、こちらのヤマザクラとしては、樹自体の様子からしても植えられた年代が元禄時代(1700年頃)とするのに疑問は感じません。
 樹齢は300年強というところでしょう。

 ヤマザクラならではの長寿さと強さを発揮してここまで生きてきた、そして今年も咲いている。
 そんな地元の巨樹とともに春を感じてみるのもいいもんだな、と思いました。


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「澤大櫻」
 千葉県香取市沢
 樹齢:300年以上
 樹種:ヤマザクラ
 樹高:15メートル
 幹周:不明(4メートル以上、目測)

4コメント

to-fu  

おお、これは良い。
巨樹そのものもですが、写真から伝わってくる狛さんとヤマザクラの関係性や距離感がすごくイイです。
元気だったか?よし、それじゃあ今日も1枚いただいてくぜ。みたいな。

豚研究所さんは覚えてますよ。あの我々に相応しい学術的な施設(メシ処)ですよね。
あの近くにこんなサクラが生えてたんですねえ。今なら絶対に寄って下さい!なんて土下座してしまいますが、もし当時「どうです?このヤマザクラ。」なんて言われても何も感じなかったのかもしれません。不思議なものです。

2019/04/04 (Thu) 21:10 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

ソメイヨシノの並木が満開状態ってのは毎年のことながらキレイで
それはそれでいいのですが、
年々老木の一本桜に魅力を感じるようになってきました。
そういう桜は、冬や夏などの季節にも、どうしているかな?とか気になったりして。
ええ、巨樹好きならではの思考ですよね(笑)。
このヤマザクラもそんな一本だと思いました。
雪景色の姿も味わい深くていいですねぇ。
むしろそういう姿を日々撮っておき、春の満開姿をしみじみ眺めるスタイルはより一層楽しめること間違いないですね。

2019/04/04 (Thu) 22:57 | EDIT | REPLY |   

狛  

to-fuさん>
今日また通りかかることになったので様子を見てきましたが、満開でした!
近いせいもありますが、他の樹に抜き出て親しみがわくヤマザクラで、見ていてつい声をかけ、写真に収めてしまいました。
見応えもけっこうありました。

そうそう、あの豚研究所のすぐそばなんですよ。
あの頃はぐいっと回り込んで変な坂を登ったりしたんですが、そこを無視する直線道路が豚の前に貫通、えー、そんなのありかよ? みたいなね。笑
おかげで大人気です。
確かにおっしゃる通り、あの時はこの桜のことなんかぜんぜん知りませんでした。
見たとして、記憶に残ったかどうか。
今だと、こういうものがこうして生えていたら、まず素通りはできないんですけどね。
もし今度春にこちらに来られることがありましたら、ぜひ。
セブンでコーヒー買って、この樹に花見させてもらいましょう。

2019/04/05 (Fri) 16:17 | EDIT | REPLY |   

狛  

RYO-JIさん>
そうなんです、僕も、ああ春が来た、ソメイヨシノたちはまぶしいなとは思うのですが、巨樹を見るようになってから、断然古木の方に惹かれます。
個性と生き様があって、その物語の中での春の満開がある。いいですよねえ。
桜はどうしても春のお披露目時に撮らないと! という脅迫感がありますが、そうですね、他の季節だって耐えるように存在している姿を見てやるべきですね。
身近では、やはりこの樹がそう思わせてくれるものだったと思います。
一緒の社会で生きている感じがあるんですよね。

2019/04/05 (Fri) 16:23 | EDIT | REPLY |   

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