巨樹を訪ねる 丸森のイチョウ

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K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 初めて宮城県入りした巨樹探訪、往復の勝手もイメージしづらかったので、欲張るのはやめて、3箇所止まりとしました。
 もちろん、これを足がかりに東北の探訪を続けることを心に決めて。

 県のだいたい真ん中辺りを占める仙台市から段階的に南下してきて、3箇所目のこの丸森というところは、福島県相馬市と境を共にする宮城県最南端の町です。
 森と耕作地が延々と続くような景色の中を走り、古びた小さな丸森町内を抜け、県下最大のイチョウとも言われる「丸森のイチョウ」にたどり着きました。
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 周囲に何もないといえばそうですが、県指定天然記念物の有名な樹であるので、グーグルマップなどにも固有名でポイントされています(「丸森の大イチョウ」とされている)。
 地図によれば、この周囲の地名は「丸森町銀杏」というらしい。
 まさに古来からこのイチョウを目印にしてきた土地なのではないでしょうか。
 県道45号を走ってきて、このポップな看板が目に付けば、もう反対側、すぐです。
 駐車スペースはないのですが、路肩が広くなっているので、混んでいなければ大丈夫でしょう。

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 大イチョウは、民家のすぐそばに立っていました。
 周囲がとても開けているので、パッと見圧迫感はないのですが、足元の建物との比較が飲み込めてくると、やはり巨樹(それは馬鹿でかい樹)と形容するしかない大きさであることがわかってきます。
 やや、お宅のすぐ前(私道?)を通るような形で歩いていき、獣除けの電線に気をつけながら、イチョウへの接近を試みます。

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 でかい……幹周囲は11メートルを超えるとされ、何があっても動きそうにないそれは、生き物というより「場所」と呼んだ方がふさわしいでしょう。
 一斉に散ったばかりのような時期であり、お宅前からずっと黄金色の葉が敷き詰められた上を歩いています。
 この地を「銀杏」と名付けたくなるのも頷けるというもの。

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 裏手へ回ってみました。
 イチョウはイチョウでも、先の仙台市の「苦竹のイチョウ」とは全く違うタイプ。
 乳柱(気根)はほとんど見られず、その分のエネルギーを萌芽枝(わしゃわしゃした小枝が幹や太枝から直接生える)の発生に注いでいる……そんな感じ。

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 シンプルさ皆無、細分化の極地という感じ。
 どこからでも枝を出し、それが各々枝分かれし……把握を難しくしてしまっています。

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 頭上を見上げてもこの有様。
 もう、放射状、全方向に向けて針金のような枝を突き出しています。
 
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 空間周波数がものすごいレベルに。
 自分でも何を言っているのかよくわかりませんが、かなりの混沌具合、めまいがします。
 今は枝だけですが、時期によってはこれらが全て葉で覆い尽くされるわけで……。

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 黄緑色から、濃い緑、そして黄葉と、そのボリュームは圧倒的だろうと想像します。
 葉がある時期に来ても、全体がその色のこんもりした巨大な塊になってしまって、幹の形も何もわからなくなってサジを投げるタイプの樹です。
 落ち葉の量もすごい。おそらく何トンにもなる分量です。
 雄の樹なので銀杏はつきませんが、それで良かったと思いますね。
 このスケールで銀杏爆弾をフル装備されたら、周囲数十メートルには接近できなかったかも。 

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 ワイヤーブラシみたいな萌芽枝が邪魔をして何とも全体図が掴みづらい。
 寄ったり離れたり、ぐるぐる回ったりして少しでも把握しようとしますが、その巨体ゆえになかなか苦労する……。
 どうやら、地上5、6メートルあたりで二股に分かれているように見えました。
 どでかい「Y」の字をしているようです。
 台風か何かで主幹を失って分岐成長したものか……ともかく今では全く衰えなど見せず、高く高く育っています。
 不規則な形をしていて、一部だけぴょこんと伸びている部分を入れるか入れないかで意見が分かれそうですが……ものの本によれば全高45メートルを超えるとのことで、これは宮城県の巨樹中でトップクラス。

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 11.6メートルという幹周囲に関しても、1、2を争う大きさとのこと。
 つまり、総合的に言って、宮城県最大の巨樹と言える存在です。
 またもやイチョウが最大の地位を勝ち取る……やはり茨城以北では圧倒的勢力ですね。
 それもまた、この図体を眺めていると疑いようもないところです。

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 解説板。
 目印に乏しいこの周辺の標識木であったようなことが書かれていますね。
 さらには霊場巡りの札所だった観音堂があったとのことです。歌もあり、

 「大空を 覆えるほどの 銀杏の木 / これや大悲の みかげなるらん」

 だいひ【大悲】 ① 衆生の苦しみを救おうとする仏・菩薩の広大な慈悲の心。

 ……という意味とのことで、その頃からこのイチョウの大きさを(仏のお力の顕れであると)讃えている。
 今では痕跡くらいしかない堂や霊場ですが、イチョウだけはますます大きく空にそびえています。 

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 宮城県最大の巨樹であり、樹勢もいいので、この黄葉の最盛期はまさに圧倒的であろうと想像できます。
 風が吹けば黄金色の吹雪に包まれるのではないでしょうか。
 去り際に振り返ると、眼下のお宅のご主人が屋根に登り、樋などに落ちた落ち葉を掃除していました。
 放っておけば詰まってしまい、排水や防水に支障をきたしてしまう。
 ものすごい量でしょうし、時期になれば毎日大変さぞ大変だと察します。
 それでもこの巨樹の下で守り続けてくれている……感謝の意を込めて会釈すると、遠く、返してくれたように見えました。


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 「丸森のイチョウ」
 宮城県伊具郡丸森町銀杏
 樹齢:680年
 樹種:イチョウ
 樹高:45メートル
 幹周:11.6メートル

4コメント

to-fu  

根元の南天がアクセサリーのようで映えますね。
いやしかしこれは…東北のイチョウは一体どうなってるんですか?
この空一面に花火が炸裂したような枝っぷりは見事!としか言いようがありません。

このイチョウを見て真夏にモリゾーと化していた群馬県の「浄蔵寺の大イチョウ」を思い出しましたが、こちらは真夏に来たらでっかいマリモみたいになってそうですね。それはそれで見てみたいかもしれない。それにしてもこの方が雄株で良かった。この大きさのイチョウにギンナン爆撃されたら近付くどころか死んでしまいそうです。

2019/01/27 (Sun) 21:10 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

行く当てのない東北方面は、巨樹調査をほとんどしていないのですが・・・。
こんなイチョウがゴロゴロ転がっている凄いエリアなんですね!
樹々の成長には温暖な気候の方が有利で、巨樹勢力は西高東低のイメージを持っていますが、
ことイチョウに関してはその法則は当てはまらないのかもしれませんね。
このイチョウは幹周も充分立派ですが、放射状?空間周波数?ワイヤーブラシ?
狛さんの壊れ具合が甚だしい表現にその枝の異常さが伝わりますし、このイチョウ最大の魅力なのでしょう。
寄り添うように民家があるのも微笑ましくていいですね。
掃除は大変でしょうけれど・・・。

2019/01/27 (Sun) 22:19 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

to-fuさん>
周囲が広く、光がよく差すので明るいのですが、黄色い落葉からの照り返しが眩しいくらいでした。
東北では、数値で追っていくと、必ずイチョウに行き着いてしまいますね。
巨樹を始めたばかりだとどうしても杉を追いかけたくなってしまいますが、イチョウにはかなわないんだな……とだんだんわかってきました。
南や西でいうクスの地位がイチョウに置き換わっている。。

このタイプは扱いが難しいですが……確かに、それほど巨大なモリゾーというのも、一度目の当たりにしておくべきでしょうね。
ど迫力には違いありません。
こうした生命力が先に感じられるところ、立派なお寺などの樹ではないところもあって、荘厳な雰囲気は漂ってはいませんでしたが、里の樹として最大級のものを見た充実感がありました。

2019/01/28 (Mon) 08:56 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

RYO-JIさん>
そうですよね、僕が三重や和歌山に行けないのと同じく、RYO-JIさんにとって東北は遠い地でしょうね。
イチョウの勢力は強く、ものの本を読んでも、他にもまだ大きいのが載っていますから、ほんと、関西以西でのクスを回っているような感じに。
原産は中国ともインドとも言いますが、おそらく山地にも適応力があって、寒さに強いんじゃないでしょうかね。
このタイプ……といいますか、他のタイプでもイチョウさんはやりすぎなところがありますよね。
クスやスギなんかは、自分がどういう樹になりたいのか、みたいな理想があって巨大化してるようにも感じますが、イチョウはもうやりたい放題、野蛮な感じすらします。
古代からの生き残りの恐竜植物なんていう人もいますが、それも頷ける……。
こういう樹と付き合うのは大変だと思いますよね。
でも、それだけに四季楽しませてくれるのかなとも、それは感じることができました。

2019/01/28 (Mon) 09:06 | EDIT | REPLY |   

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