巨樹を訪ねる 宿椎

sakuragawa1804.jpg
K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 茨城県桜川市の「雨引観音」はどうやら有名なお寺のようで、ちょっとした山の上にあるのに、登り切ったところの駐車場にはたくさんの車が停まっていました。
 途中まではそんなこと想像もしないような山道なので、着いてみてびっくりです。

 ここでのお目当ては幹周囲7メートルを超えるスダジイ。
 「宿椎(やどしい)」という樹です。
sakuragawa1801.jpg

 「板東33観音霊場第24番札所・雨引山楽法寺」というのがお寺の正式名で、この霊場巡りをする方達は必ず寄る。
 しかし、現代および今日は、見るからに全然違う人たちでごった返しています。
 観光客らしき方々も見受けられますが、目立つのは若い夫婦、しかも赤ちゃん連れ。
 なるほど、子宝・安産・子育て祈念で有名なお寺なんですね。

 ……自分には関係ないや。
 などと思いつつ、大きなお寺目指して進みます。
 目標の宿椎も、この時点ですでに見えていますね。
 秋でも落葉せずにこんもりと茂っているので、すぐにわかりました。

sakuragawa1802.jpg

 さらに近づくと、その規模の大きさがわかります。
 樹冠としては多少周囲の別のスダジイと被っているところがありますが、これは期待できそうです。
 突き出している幹もかなりの太さに見えます。

sakuragawa1803.jpg

 石垣手前まで来ると、その幹を仰ぎ見ることができるようになります。
 なるほど、これは確実に7メートル級かそれ以上あるように見える。
 特有の塊感……スダジイの、でっかいやつだ。

sakuragawa1805.jpg

 立地としてはこのような感じで、本堂に登る石段の途中、踊り場……ではないですが、それに近い感じのところに生育しています。
 少ないスペースで大きく育っているので、石垣の外へ半身を乗り出しているような感じですね。 

sakuragawa1813.jpg

 このため、他の樹と違って、真下から見上げることができます。
 この眺めがすごい迫力。
 うねる主幹は極太で、極めてゴツゴツ。
 覆いかぶさってくるかのように……いや、実際、長く伸びた枝々が下の順路の頭上を覆っています。
 しかし、抱っこした赤ちゃんに気が行ってしまってる多くの人が、気づきもせずに通過していく。
 これに気づかないなんて、逆にすごいな。

sakuragawa1807.jpg

 手水があって、石段をまたちょっと登ると、正面に「宿椎」が来ます。
 大きいです。
 目通りの太さは確かに7メートルで正しいかと思いますが、その上部ははるかに太い。
 コブ状に盛り上がって、すごいボリュームです。

 まっすぐ椎のすぐ近くまで駆け寄り、その大きさ、捉えにくい形状を何とかカメラに収めようと試みます。
 繰り返し撮っていると、石段を登ってきた方々もようやく気づき始め、「でかい樹だ!」とか言って写真に撮り始めます。
 そうそう、それでいい……と思いつつ、スダジイを撮った写真を後で見て楽しめる人ってどれだけいるんだろう。笑

 風によるものか、大枝が欠損しているところがありますが、樹勢はかなり良さそうです。
 競争相手がいない立地で、空中に長大な枝をさしのばして、存分に日光を浴びています。
 
sakuragawa1812.jpg

 欠損部。
 荒々しくもぎ取られたような傷跡をそのままにしています。
 しかし、これでもちっとも痛々しく見えないのがスダジイのすごいところです。
 根元の土も砂質で固く、養分が全然なさそうなんですが……。

sakuragawa1815.jpg

 石段を最上部まで登り、本堂にお参りしました。
 絶えずたくさんの人が登ってくる、とても人気のあるお寺なんですね。
 初詣なども賑わいそうです。

sakuragawa1808.jpg

 茶屋の脇(狭い)をすり抜けると、満足ではありませんが、上から宿椎を見ることができます。
 まさにデータ誇張なし! と確認できる眺めですね。
 というか、むしろ一番細いところを測ったのでは? と思うような体躯。

 樹齢は不明とのことですが、まず300年くらいは固いのではと思います。
 この場所の地形が古くから変わっていないのでしょう、最初から石垣外の空中に枝を伸ばして支えるつもりで、身をねじり、膨れ上がっています。
 この辺りの造形がやたらに力強く、躍動感があります。

sakuragawa1810.jpg

 場所が狭いし、別の樹が被ってきたりもしますが、無理して違う角度からも。
 幹に大きな不朽などはなく、概ね健全と言えると思います。
 食い入るような着生植物もない。

 別段霊樹などと崇められている樹ではないようです。
 大和村指定天然記念物とのことですが、その村も桜川市に合併されて消え、指定がどうなっているのかよくわかりません。
 お寺が有名な一方で注目されていない樹ではありますが、安心して見られて迫力も感じられる、良いスダジイの巨樹だと感じました。
 特に大々的に取り上げていなくとも、周囲の木々や庭の一部という感じでちゃんと手は入っているのだと思います。

sakuragawa1811.jpg

 名の由来は、かつて寺に火災が起きた際、本尊をこの椎の側に避難させた故事から「宿椎」と呼ぶようになったとのこと。
 霊的な意味ではなく、物理的な意味での「宿」でした。

 いずれにせよ、立派なお寺が有するのにふさわしい貫禄ある巨樹なのは疑いない。
 お寺が立派なのに周囲の樹がしょぼしょぼだったら、やっぱり違和感ありますよね。
 このお寺のご利益大丈夫? と思ってしまうかもしれないし……。
 そういう意味でも、やっぱりこの巨樹は必要とされる存在なのだと思いました。

sakuragawa1814.jpg

 駐車場の脇に、大きなスダジイの残骸が置いてありました。
 周囲には何本もスダジイがあるので断定はできませんが、もしかしたら宿椎の折れた枝だったかもしれません。
 動かそうったってびくともしない、相当な大きさでした。


sakuragawa1806.jpg

 「宿椎」
 茨城県桜川市本木 雨引観音
 樹齢:不明
 樹種:スダジイ
 樹高:15メートル
 幹周:7.5メートル

4コメント

to-fu  

何か聞いたことがあるな…と思ったら、マップの行きたい場所リストにこの雨引観音と真壁城跡公園がチェックしてありました。

これは健康的なスダジイですねえ。
スダジイらしからぬと言いますか、狛さんの写真を見たからなのかやけに青空が似合うシイだと思いました。シイというとどちらかと言えばジメジメ、鬱々としたイメージが有りますが、大枝の折損が全く気にならないくらい活き活きとして見えます。(シイに失礼だ。)年始にでも行ってみたいところですが、流石に正月の時期は巨樹を見るなんて余裕は無いくらいに混むんでしょうね…

2018/12/09 (Sun) 17:17 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

to-fuさん>
さすがto-fuさんだ……この椎をチェックしているとは。
主幹に傷みが見られない堂々とした椎で、幹周7メートルというのだけでも見に行くけど、実際にはそれ以上の大きさを感じられる良い樹です。
ダイナミックかつ、ご指摘の通り、椎だけどカラッとサラッとした印象ですね。
照葉樹林というのは、自らの枝葉で覆い尽くしてジメッとさせてしまうということなのだと思います……。笑
お寺的にも全体に庭管理が行き届いた感じで、いい環境でした。
駐車場や敷地内にクジャクが放し飼いになってるんですよ。

まあ、ただ宿椎の立地がね、すごく騒がしいですよね。
狭いですし、絶えず人通りがあるので、とても落ち着いていられません。
特筆すべきはその人通りの大半が幸せそうなファミリーなので、ちくしょう……じゃなかった、羨ましいくらいのハッピーな気配が押し寄せてすごく気が散ります。
初詣シーズンは絶対! 無理です!
山頂まで登ってこれないかもしれねえ。
その人だかりの熱気を吸って、また宿椎が太くなっていきそうですよね。

2018/12/09 (Sun) 21:02 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

ふふふ・・・いや、自分もチェックしていましたよ。
はい、嘘です、スミマセン(悔しい)。

そんな勉強不足を露呈しちゃってますが、同じくシイのイメージとは違う陽な印象を受けました。
人目に触れる場所に存在するにも関わらず、あまり注目されない巨樹。
でも参拝する人々を温かく見守ってくれていそうですね。

あと幹周計測の方法ですが、こういう巨樹を見ると疑問に思わざるを得ませんね。
一番太い場所で計測すればいいんじゃね?と単純に思うんですが、

それだとコブがあったり合体していそうなヤツが有利だなぁとか・・・。
まぁ小難しいことは置いといて、目の前にある巨樹を楽しみたいと思います。

2018/12/09 (Sun) 22:42 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

RYO-JIさん>
いや実際この椎の露出はかなり限られていると思います。
僕やto-fuさんのようにリストのリンクを全部開いてみるような奇特な真似をしない限りは見過ごすのではと思いますね。笑
さらに言えば、どうしてもスダジイは後回しにされがちですし。面白いんですけどね。
宿椎は珍しいくらいにポジティブな椎でしたね。いい樹です。

幹周に関してはあくまでレギュレーションでしかないのだなあと。
何かしらを定めておかないと基準がない。なので我々としては適度にそれを無視して探求していかないと意味がないですよね。
あとは、データに付随する写真やコメントの重要性もやっぱり感じます。

あー、そこを測っちゃうか、みたいなね。
両方の意味での巨樹あるある、ですよねえ。

2018/12/10 (Mon) 08:53 | EDIT | REPLY |   

コメント投稿