巨樹を訪ねる 緋牛内の大カシワ

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K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 網走市からは再び内陸に入っていきます。
 林業が盛んな津別町では2日前に「双葉のミズナラ」を見ましたが、その津別町も網走市の南の内陸部に位置する町でした。
 徐々に巨樹と呼べる樹も増えて来そうな森や山地が増えてくる。気配がします。

 北見市端野町緋牛内(ひうしない)という変わった名前の地区、JR石北本線の緋牛内駅の近くに、日本一だという大きなカシワがあると知り、行ってきました。
 「緋牛内の大カシワ」です。
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 国道39号を進んで、もう少しで隣の美幌町というところで、左手に白い看板を見つけて曲がる。
 そこから少し未舗装路を走りますが、荒い道ではないので楽ちんです。
 大カシワは開けた道の分岐点に1本きりで立っているので、すぐに目につきます。
 巨樹に関心がない方でも随分と立派な樹があるなあと思うはず。

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 これが日本最大のカシワの幹。
 目通り幹周5メートルともなると杉でもなかなかの大きさを感じるものですが、ゴツゴツとした樹皮の感じや膨れ上がった形のために、もっと大きい数値を出す箇所がありそうです。
 逞しい。この一言に尽きますね。

 千葉県には柏市という市がありますが、カシワの樹自体をしげしげと眺めた記憶がありません。
 シイに押し負けて千葉では目立たないのか……ですが北海道では勢力を誇っているようで、北見市でも道沿いの企業の敷地にいっぱい植えられていたりしました。
 葉が大きいので、あればよく目立つのです。

 カシワはブナの仲間で、どんぐりができる樹です。日本から朝鮮、中国に生育。
 知らなかったのですが、寒冷地や痩せた土地にもとても強い樹であり、北海道ではマツが防風林に使えない場合にカシワが使われるという。
 かなりの屈強さです。

 ちなみに「柏」という漢字は中国ではヒノキ科の植物のことを指すようで……要するにこのカシワとは全然違う裸子植物のことを指すのですね。
 その理屈で言えば、スギやサワラやイブキも「柏」らしいです。
 ああややこしい。

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 確かにこれはカシワだ……と思わせてくれるのが、やはりこの大きな葉っぱですね。
 そう、かしわ餅を包む、あのいい匂いの葉ですね。
 こうして見ると厚手で、艶があり、実にしっかりとしています。
 ホオノキもそうでしたが、こういうのはどうしても何かを包みたくなる。その気持ち、よくわかります。笑

 「カシワは落葉樹だが、秋に葉が枯れても翌年の春に新芽が芽吹くまで葉が落ちることがない。そのため冬季の強風を防ぐ効果を果たす。
  葉には芳香があり、さらに翌年に新芽が出るまで古い葉が落ちない特性から「代が途切れない」縁起物とされ、柏餅を包むのに用いられる。」

 とのこと。
 なるほど、そういう縁起物なんですね。

 「名古屋市以西では鶏肉のことを「カシワ」と呼ぶ事があるが、これは地鶏の羽色が柏の葉の紅葉の色に似ていることからこう呼ばれる。」

 ははあ、なるほどね。
 と、つい字引きの引用で進めてしまいますが、そこまで知らずとも、これはこれで北海道ならではの巨樹なのだなと感じるところはありました。

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 樹勢はかなり良さそう。
 幹には大きなうろを樹脂で埋めたような箇所がありますが、そういう処置も功を奏しているのだと思います。
 片側に偏ったようになってはいますが、枝張りも広く、十数メートルはあるでしょう。

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 樹冠の下に入って見上げると、葉が大きいこともあって日が遮られ、とても迫力があります。
 徐々に色づいてきているところも綺麗な発色です。

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 見ているとなんとも豊かな気分になれる樹だなと思いました。
 幹や枝は逞しさを感じさせ、大きく色濃くどっさりした葉は気前が良くてリッチな感じがする。
 大きさでは当然針葉樹の巨樹たちには及びませんが、広葉樹種の巨樹のこの感じというのは、向こうには到底真似できない魅力的なものです。
 この上丈夫で、葉はいい匂いだし、どんぐりまでつける。
 庭に一本欲しい樹がまた増えたように思いました。

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 ああ……本当に豊かな、いい樹だなあ。
 すぐそばに酪農施設があって、向こうには牛の姿も見えました。
 なんとものどかなところで、毎朝この辺を散歩して、このカシワが季節によって表情を変える様を見られたらいいのになあ……などと思いました。
 どうも自分は、葉っぱの大きな巨樹を見上げると、「家」に近い感じを抱くようです。
 その樹を中心とした毎日の生活や、もっと言うと、その樹の下で暮らすことなんかを連想してしまうようです。
 そういう、有用性を超えた大きな包容力のようなものを感じさせてくれるのでしょう。

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 などと撮り続けていると、にわかに遠雷が轟き、冷たい風が吹き始めました。
 予報で雨が降るというレーダー画像を見てはいましたが、この時期の北海道は天気が変わりやすいようです。
 話によれば、翌日はかなり冷え込んで、峠では初霜になるかもとのこと。
 葉っぱが色づいてくると、いつもそんな感じだよ……と、大カシワが言っているかのようでした。

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 解説板。
 例によって北見市の紹介ページも載せておきます。
 ここには「北見市で最大最古の樹木であり、市指定天然記念物」とありますね。
 確かに、選ばれた樹種にせよ5メートル超えは難しい風土かもしれません。
 かと言って本州にもこれを超えるカシワは存在しないという事実に再び驚きます。

 一通り撮ったと確認した後でも居心地が良くて離れ難かったのですが、気圧が下がり、冷たい強風に小雨が混じり始めたので退散を余儀なくされました。
 こういう樹には、立ち去り際に「ありがとう」と「さよなら」を言わずにはいられない。
 北海道は広いけど、近くを通るならまた寄りたいと思う樹です。


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 「緋牛内の大カシワ」
 北海道北見市端野町緋牛内
 樹齢:350年以上
 樹種:カシワ
 樹高:17メートル
 幹周:5メートル

2コメント

RYO-JI  

柏餅、美味しいですよねぇ。
さすがに大人になってからは控え気味にしてますが、ハッキリ言って毎日食べたいくらいです(笑)。

日本一ののカシワですか!
日本一という響きだけで行く価値ありますね。
この目で絶対に見てやりたいと素直に思います。
そして幹周5mというのは、巨樹としては特別ではないかもしれませんが、
狛さんの感想から容易に想像がつきますよ、これが特別な巨樹であることが。
ずっと身近に感じていたい、そう思える存在ってなかなか貴重だと思います。
大きさだけが魅力じゃないと改めて思わせてくれるいい巨樹ですね!

2018/11/23 (Fri) 21:42 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

RYO-JIさん>
僕もこの際はっきりさせたいのですが、ほんと柏餅はうまいですよね。
食いたくなってきました。笑

国指定天然記念物の立場が危うい今、日本一!(恥ずかしいがあえて「にっぽんいち」と読みたい)の肩書きに期待したいところですね。
数値では2位でも日本一!ということは実際あるわけで……あるんです……それは自分の目で確かめないと。
うちのコレが日本一なんだよ! と自信を持ってる地元の人の話を聞ければ、それもとても楽しいです。

……ということですが、このカシワは特に異論なく日本一の幹周のようです。
幹周5メートルのカシワというのはすごく豪勢。
でも、この樹が元気だからそう思うんですよね、きっと。
地域の人がそれとなく気にして、コストをかけて処置をしたり、そういう賜物なのだと思います。
周囲環境の良さも。
そういうものが全て表れた結果なんだよなあと、今見て改めて思います。

2018/11/24 (Sat) 08:19 | EDIT | REPLY |   

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