巨樹を訪ねる 高瀬の大木

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K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 巨樹を追って喜多方市から会津若松市へと流れてきました。
 16時半も過ぎて日が傾き、雨まで降ってきましたが、道の方でもなんか色々あって。
 しかし、頑張ってたどり着きました。

 福島北部へ行くならば絶対に無視はできない……だってその名もずばり、「高瀬の大木」。
 この朴訥なネーミング。
 「高瀬ってとこにあるとにかくでかい樹」、の意です(それはそうだ)。

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 慶長5年(1600年)、上杉景勝が着工させたという「神指城」の城跡がその所在地。
 ここは会津盆地の中心部にあたるそうで、立地を生かした巨大な城となり、全域で50万平米もあったとか。
 しかし、世の流れのせいか、ついに未完成で終わったのだそうです。
 「大木」は、その東北の土塁上にあるとのことですが……今は公園のようになっているそこへ近づけば、すぐに「あれだ!」と気づくことができます。

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 もちろん、その巨大さゆえです。
 「大木」というぶっきらぼうすぎる名称だけでは何の樹なのかも判別できませんが、一目見ればケヤキ、とんでもなく巨大なケヤキであることがわかります。

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 先に謝ってしまいますが……そして、このクラスの巨大ケヤキ、「東根の大ケヤキ」「八幡のケヤキ」「泉福寺の大欅」などでも同じようなことを書きましたが……この巨大さが写真だけで表現できるとはとても思えません。
 撮る前から勝負はついている……しかしそこで食い下がって、小さい人間なりにできることを全てやるつもりで挑み掛かる。
 これはそういう対峙なのだと、まあ、聞き辛い言い訳をするしかないのです。

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 幹周囲のサイズ感もさることながら、樹種がケヤキであることで、発せられるその物体感、質量感がハンパではありません。
 岩塊か、要塞か……とてもこれがひとつの生命体だとは思えないような巨大な存在感を感じます。
 灰色の樹皮に覆われた幹はとてつもなく硬そうで、この根本部の安定感といったら、何をしても動かせそうにありません。

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 北朝鮮のミサイルくらいなら平気で食い止めてくれそうな頼もしさですが、しかし、じわじわとこの巨樹を苦しめるものが。
 木道を回り込んでいくと、その現状が明らかになります。
 その脅威の正体は、自重。
 並木に植わっているケヤキの主幹くらいはある(いや、もっと太い……)大枝が三股に分岐していますが、そのうち一本が横に倒れすぎ、幹が裂けつつあるのが見て取れます。
 
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 これはかなりまずい。
 バキッ! といってしまえば、幹が半分がた崩壊してしまいそうです。
 15年ほど前のものらしい先達の方の写真も見ましたが、その時よりも割れは大きくなってきているようです。
 幸い今では、亀裂になったところに防腐処置がされているらしく、大枝には支えが入っていますが、実に重そうです。

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 反対側から。直接の原因は台風ではなかったかと思われます。
 実際、急にこのレベルでの破壊が起きてしまうと、樹全体がバランスを失って立っていられなくなります。
 この大ケヤキの場合は根幹が大きいので耐えるかもしれませんが、裂け目から確実に傷んでくる。
 他にも大きな規模で枝を失った傷跡がありますが、こうした手当を見れば、古くから親しまれている人里の樹は幸いと言うしかありません。

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 木道にはしっかりとした手すりが完備され、ケヤキの近くには踏み込めなくなっています。
 もちろん根の保護のためで、邪魔で写真が撮れなーい! とかつまらんことを言わないで、素直に従っておいた方が良い。
 迂闊に近づいて、もし枝の……何ならこの樹で言う「小枝」の一本でも頭の上に落ちてきたらと考えると……。

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 幹の破損は大きいですが、秋を前に葉の茂りは青々と多く、見上げた姿は壮観そのものです。
 やはりこれは岩山じゃないんだ、樹木なんだ! と感動してしまうような圧倒的な眺めです。
 相当這いつくばって人様に見られたくない格好で撮っていますが、そうとでもしないと、大きすぎてとても全体が入りません。

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 もう一度、最も重厚かつ大木という感じが出る角度から。
 単に太く大きいだけではない、この樹が与える印象を何となくでも共感していただければ嬉しいです。
 この頼もしさや堅牢さは、きっと会津の人たちが愛したに違いない要素だろうと思うのです。
 真面目で、曲がった事が大嫌い。この地を頑として守り続け、一切動じない。
 戦国の城にもまさにふさわしい巨樹だと感じました。


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 解説文。
 築城開始時にはすでに大木であったということから、この樹を目印にして城が計画されたに違いありません。
 幹周囲は10.45メートルとありますが、環境省の計測では11.7メートルとあり、巨樹揃いのケヤキの中でも全国第6位の大きさ。
 もっとも、上位ランカーにもこの樹以上に崩壊が進んでいるものがあるので、まだ健康な樹という点で絞れば、さらに上位にせり上がってくるでしょう。
 樹齢は、城の年代から考えても、少なくとも500年は経ていることが確実。
 誰もが納得する国の天然記念物指定樹木です。 

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 巨大な幹越しに金色の田んぼが鮮やかに見えました。
 もうじき日が暮れるようです。
 城跡を中心とした広い範囲が再開発されるようで、工事中でした。
 新たな景観の中で、「大木」がどのように見えるようになるのか。
 それも含め、また是非とも会いに来たい樹だと感じました。


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 「高瀬の大木」
 福島県会津若松市神指町高瀬五百地 神指城跡
 樹齢:500年以上
 樹種:ケヤキ
 樹高:24.64メートル
 幹周:10.45メートル

4コメント

to-fu  

良いですねえ。何よりホント名前が良い。
彼岸花がタンポポか何かのように小さく見える。ああこれはデカイわ。素晴らしいケヤキです。
樹形も含めてこちらの「野間の大けやき」によく似ているので大きさも何となくイメージできました。

それにしても自重に負けて力尽きるのはケヤキの宿命ですね。僕が見てきた名のあるケヤキの巨樹も皆、人間の支えが無かったら即座に倒壊してしまいそうなものばかりでした。行き過ぎた成長で身を滅ぼすケヤキ。なんて不合理な生物なんだろう。

ケヤキの巨樹はわりと優先的に見に行くくらい好きなんですけど、天然記念物クラスになると直接触れたりできるものが極端に少なくなるのがちょっと寂しいですね。樹木医学の世界がもっと進めば、いつかまた暖かい幹に触れられる日がやって来るのでしょうか。その日まで生き続けていただきたいものです。

2018/10/25 (Thu) 20:30 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

一枚目の写真を見て、『えっ、こんなに太い幹なのに何で支柱が・・・?』
という疑問の答えは自重によるものだったとは。
大きくなり過ぎた故のこの姿というのは、人間に置き換えて考えるとちょっと残念でなりません。
でも人間のような自業自得&怠惰からくるものではなく、自然界ならではの現象ですから
存命のために手を貸してあげたくなります。
国天ということで引き続き手厚い加護をすべき貴重な存在だと思いますね。
10mを超すケヤキのボリューム感は、to-fuさんもおっしゃるように
野間の大ケヤキを連想させてすぐにでも見に行きたくなります。
いやぁ、ほんと、いいケヤキですね。
しみじみそう感じます。

2018/10/25 (Thu) 23:33 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

to-fuさん>
「高瀬の大木」なんて漠然とした名称、このあたりででかい樹と言ったらもう真っ先にこれということなんでしょうね。
「なんじゃもんじゃの木」と同じくらい印象的です。

とにかく、ケヤキの10メートル超えというのは、何本見ても圧倒されてしまう独特の迫力がありますね。明らかに杉などとは違う。楠も樹皮は似た色ですが、やはり重量感が違う。
大枝がとにかく逞しくなってしまうので、巨大になればなるほど崩壊する危険性を孕んでしまうところも特徴的ですね。
でかくなりすぎて生き延びられなかった恐竜のようです。
現世に恐竜、特に超巨大草食恐竜が生きていたら、きっとこの超大型ケヤキに似た存在感なんじゃないかな……と想像しますね。

この規模になると、崩壊した枝が落ちてくるのも恐怖ですが、そうですね、できればさらに近づいて、さらに圧倒されたい。
並木でもケヤキはずんずん大きくなりますが、いつの間にか全部切り倒されてたりしますよね……あれは悲しい。
だからこそひときわ堂々と生きている福島、山形、新潟の大ケヤキもまた巡ってみたいなと思いました。っていうか、行こう。

2018/10/26 (Fri) 09:27 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

RYO-JIさん>
(やべえ、やりすぎた……ガタがきとる……)……みたいな。笑
まあ、樹は後悔はしないでしょうし、こうなることも織り込み済みで大きくなるものなのかもしれません。
何れにせよ、ここまで至る樹が少ないですし、珍しさだけでも保護して見守っていきたいというのが人間の心情ですね。
僕も、この「大木」を見て、他の偉大なケヤキの巨樹を再訪したくなってきました。
野間の大ケヤキもいつか訪ねたい、いや、訪ねないとダメな樹ですよね。
その際にはお二方にぜひご案内願いたいところです。

2018/10/26 (Fri) 09:40 | EDIT | REPLY |   

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