巨樹を訪ねる 姥樫

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K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 ときがわ町の巨樹巡りも、記事にする分はこれで最後になります。
 しかし……どうしてこう雑木林みたいな写真がトップに?
 それはそうなんですけど、ワケありで、すみません……。

 ちょっとビビってます。
 この巨樹、僕がこれまで出会った中でも、トップクラスに怖い形相の樹だったものですから……。
 「姥樫」。
 古い樫の巨樹で、地元の人は「ウバッカシ」と発音するようです。
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 場所としては、前回の「越沢稲荷の大スギ」と同じ地名ではありますが、数キロ離れている。
 街へ向かって数キロ戻るというなら気が楽ですが、どんどん山中に入っていく方向で……。
 道がすごく狭くなり、ここらかと思って現地のおじさんに訊くも、まだまだ先と言われ……ようやく山の奥の奥でこのような看板を見つけて、あとは徒歩の探索行に。

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 土砂崩れがあったようでもあり、熊の気配すら気になるような雰囲気。
 しかも日が傾き始めている中を、恐る恐ると歩いて行きました。
 そのようなシチュエーション自体も悪かったのだとは思いますが……

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 ウワアッ!?
 と、思わず手が震えて写真がぶれる。
 あ、あの巨大な影、あれが「姥樫」……。

 身体が硬直してしまいました。
 足が前に進まない。
 その場で体勢を整え、もう一度、じっとピントを合わせました。
 

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 再度、これが「姥樫」です。
 正直、なんという気味の悪さだろう……。
 樫の巨樹には、「怖くない奴」「怖い奴」がいることはすでに知っていますが……この、こちらを金縛りにするような威圧感はなんだろう。
 勇気を出して、もう少し近づく……。

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 ああ、やはり怖いタイプの樫だ……。
 しかもかなりの巨大さ。
 樫で6.6メートルとは、信じがたい。

 「姥樫」とは、古来命名された当時から相当な老樹に見えたからとのことですが……強烈な狂気を帯びてこちらを睨みつけてくる魔女のようにも見えなくはない。
 昔の人も、それを感じたからこそ、「姥」と付けたのではないのでしょうか。
 とにかく、この薄暗い山中で、これはキツい。
 ブレアウィッチ・プロジェクトじゃねえぞ……。

 正直ビビってしまい、ヒューマンスケールはおろか、できるだけこの樹とは距離を置こうと考えてしまう始末でした(情けない)。
 いや、それくらい強烈なんですよ。
 我こそはと言う方は、似たような天候と時刻にこの樹と対面してみて欲しい!
 ねじくれた異様な質感の幹、振り回したような大枝には、かなり不気味な躍動感があり、今しも激しく動き出して襲いかかってくるんじゃないかと……

 と、その時!
 ドドドドドド……!
 と低い轟きが起こり、直後携帯が悲鳴めいて鳴り喚く!
 
 ……やめてください、叫んでしまったじゃないですか!!
 群馬を震源とする震度5クラスの地震でした。
 埼玉県も3強から4の震度で揺れたらしい。
 よりにもよって、こんな樹とサシで向かい合ってる時に!
 
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 おかしな話ですが、地震で良かったというか。
 気を強く持って、少し回り込んで観察して見ることにします。

 幹が真っ黒い。
 おそらく雨で濡れてこうなっているのだと思われますが、それにしても、健康的であるとか老いているとか、そういう通常の見方が通用しないような異様さがあります。
 樫でこれだけの大きさのものはかなり少ないと思われ、アカガシと限るならば、ひょっとすると全国のベスト10にもランクインするかもしれません。
 樫は、文字通り堅い樹であるわけで、成長が遅くて高密度な性質。
 この大きさの樫は、それ自体、独特の強烈な存在感を放つものなのだと思っています。

 が、それに加えて、この形。
 斜面に抵抗しつつ、陽を求めて身を旋回させたということなのでしょう。
 枝張りは20メートル以上はありそうで、かなり広い。
 そこからも、この「腕」がこちらに届きそうで脅威を感じるのです。

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 真裏に回りましたが、自身の枝葉の茂りも少なくなく、他の雑木の群にも遮られてろくに見えません。
 しかし、トンネルのようになったところから望遠で覗くと、視界が全て真っ黒い壁のような幹で塞がれる。
 すごい質量を感じさせます。
 ここまで至るには樹齢はどのくらいになるものか……。
 山中の樹であるので、樹齢は不明らしいです。
 いつの頃からか土地の人の記憶に現れ、語り継がれているのです。

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 説明文。
 そういえば、道を聞いたおじさんも「ウバッカシ」と発音していました。
 背筋がゾクゾクして、健康状態だとか周りの環境云々だとか、当たり前の点もろくに観察していない自分に、後で気づきました。
 怖い樹という点では、あの野獣のような裏杉の群れも怖ったですが、この樹のは、もっと陰湿で執念深そうな意思を感じる怖さでした。
 こんなのもあるんだなあ……と、生気を吸われたかのように疲れが出るのでした。
 まあ、道中の険しさのせいかな、きっとそう、きっと……。

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「姥樫」
 埼玉県比企郡ときがわ町椚平
 樹齢:不明
 樹種:アカガシ
 樹高:不明
 幹周:6.6メートル



・おまけ・

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 姥樫の側から400メートルほど行くと巨樹認定されているカツラがあるということで、熊に怯えながら行きました。
 この山道での400メートルは結構しんどかったのですが、カツラはハズレです!
 確かにありましたが、かろうじて目通り3メートルを越しているにすぎない。
 そしてその規模のカツラというのは、カツラゆえに巨樹としては鑑賞に耐えない……。
 樹高はそれなりにあって、若そうだし、これから頑張って育って欲しいですね。

4コメント

to-fu  

この樹皮凄いですね…樹皮のアップの写写真を見て鳥肌が立ちましたよ。実物はさらに凄いんでしょうね。チキン野郎なので晴天の真昼間に行ってしまいそうですが、どうせなら狛さんと同じシチュエーションで臨んで恐怖に慄かないと損かもな、とも思います。今回埼玉は完全スルーしてしまいましたが、これまた粒揃いですね。次回以降の楽しみが出来たというものです。

そういえば結構な巨樹を回ったつもりだけどカシの巨樹はツクバネガシ2本しか見た記憶が無い…
同じカシでもツクバネガシとアカガシでは随分と印象が違いますね。
滋賀県にアカガシの巨樹があることは知っているのですが、この巨樹を見ていると俄然興味が湧いてきました。

2018/09/02 (Sun) 20:42 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

あぁ、怖い。
これは完全にアカン奴ですね!
自分が見て怯えたアカガシを思い出してしまいました。
幽霊的な怖さは全然大丈夫なんですが、このタイプの怖さはダメです。
姥樫っていう名称も何やらおドロドロしい感じがしますし、絶対に何か良くない逸話がありそうですね。

幹の濡れた感じがまた表皮の黒さを際立てていますよねぇ。
でもこういう感じがアカガシの個性だと思えば、一番いい状況で見られて良かったのかも(←人ごと)。
幹や枝のうねり具合、その姿が目に焼き付いて今晩は悪い夢見そうです(汗)。

2018/09/02 (Sun) 21:13 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

to-fuさん>
全く、アップになった写真をいじるのもうすら怖くなるような感じが今でもあります。
これもなかなかスケール感が伝わらないのではと思うのですが、実物は、見下ろされるような、立ちはだかるような大きさがあります。
ほんと、おっかないんですが、こういった感じも非日常の体験で、ホラー映画みたいに中毒性があります……。

逆に僕はツクバネガシには出会ったことがないんですよね。
カシはほんと、陽と陰の差が激しすぎるので、こちらもコンディションを考えて挑んでみたいところですね。

2018/09/03 (Mon) 08:52 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

RYO-JIさん>
あかんヤツ、それもかなりトップクラスにあかん感じでした! 泣
この場合、こういう平常心を奪うようなビジュアルのデカいものが、実物として目の前に出現してますから……これは圧倒的。
ここになんかほんと陰湿な伝説でもついていれば、有名なスポットになりそうです。
道のりも含め、初心者やハッピー連中にはおすすめできないですね。

改めて見て、これ、炭化してるのか?と思うほど黒いのですが、そうではないようで。
ひょっとすると、主幹レベルでは枯れているのかもしれず……いや、わからんですね。
こいつはかなりキテますよ……。

2018/09/03 (Mon) 08:57 | EDIT | REPLY |   

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