巨樹を訪ねる 西平のカヤ

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K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 「萩日吉神社の児持杉」の右脇を通る坂道を数百メートル登っていくと、藪の中に誘うような「大カヤ」の看板。
 その道行そのものがトレッキングコースになっているくらいの、なかなかの山道を歩かされますが、結果から言うと、苦労してでも見に行くべき大カヤに出会えました。

 こちらも本来の呼称はただ「カヤ」というだけで、そりゃまあカヤですけど……ということで、先達の方にならうことにします。
 「西平の大カヤ」です。
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 この道がまた……トレッキングポールを置いて来たことを後悔。
 ちょっとした雨が降った後で、岩がちな足元がツルツルにスリップします。
 慎重に動かないと、すっ転んで後頭部でも割ったら一発アウト。
 帰りの下りが恐ろしい……。 

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 倒木を乗り越え、息を切らせつつ上っていくと、やがてそれらしき影と気配が現れます。
 ああ……あれだ。
 違ってたら、逆におかしい。

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 出ました、これが「西平の大カヤ」。
 林の中でも見間違いようもない巨樹特有の雰囲気を発散しています。
 周囲の藪が夏を前にどんどん濃くなっていますが、カヤの周囲だけは手入れをされているようで、ほぼ一周して歩くことができます。
 ありがたく近づいて眺めさせてもらいます。

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 「カ ヤ」。
 そう、その通り、見るからに……どこからどう見てもカヤです。まあ、すごくでっかいですが。
 樹齢1000年と言われる通り、大きさもさることながら、ウロや枝が折れた跡など、長い一生の記憶を身に刻みつけているかのような姿。
 かなりの迫力です。

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 雨で湿って黒くなった樹皮が少し不気味にも見えます。
 老樹だけあって、どっさり緑の葉をつけているというよりは、着生植物とともに静かに息づいていると言った感じ。
 しかし、折れた箇所や古くなった枝から無数の芽を出している様子は、まだまだ朽ち果てはしない生命力を見せつけているかのようです。

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 幹周は6.6メートルとのこと。
 カヤの巨樹としてはなかなかの大きさです。
 国指定天然記念物の「与野の大カヤ」という幹周7.3メートルの大カヤに次ぐ、埼玉県ナンバー2のカヤということになります(こちらは県指定天然記念物)。
 傾斜地に生えていることもあって、実際に根幹部から受ける印象には、もっとずっと大きくないか? と唸らされます。

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 カヤといえば、実が食用になることで、飢饉の際などに人々を救う逸話が数多く残されています。
 そのためにお寺などによく植えられているわけですが、この大カヤはそういう話とは縁がなさそうです。
 山の中にあって、雰囲気的にも野生の樹という感じが強い。
 雌雄どちらかということはありますが、昔の人ならここまで実を拾いに来ていた可能性はあるかも知れません。
 
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 樹高が高くない代わりに、枝張りが広い。
 下り斜面を軒のように覆う長大な腕を伸ばし、周囲の若い針葉樹たちを牽制しているかのようです。

 足元にある解説碑文には、東西南北ともに25メートル以上という立派な数値が書かれていますが、現在では斜面上方向の枝が失われています。
 もっとも、この碑文がもう40年以上も前のものなので、仕方なしか。
 枝張りが大きい巨樹が片側を失うと、それ自体立っていられなくなることも多い。
 長さの割に枝が細いことが幸いということもあるでしょうが、現在でも大きくバランスを崩さずに生きているのはさすがだと思いました。
 
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 解説文。
 「都幾山 慈光寺」とは、ときがわ町に現存するお寺で、1300年の歴史がある古刹だそうです。
 このお寺の周辺に「七井、七石、七木」とされるものがあり、この大カヤがその七木のひとつとのこと。
 慈光寺のサイトによると、以下。

 「都幾川慈光寺実録」には、慈光七木として「立ち返り柳」「椎樫」「五葉の松」「大栢」「八重の桜」「一本樅」「天狗杉」の名称が記されております。
 これらのうち「大栢」は、萩日吉神社の南東にある、県指定天然記念物の「大カヤ」であると推定されています。しかしその他の七木の所在と由来は、残念ながら分かっておりません。

 ……とのこと。
 近くにあるのに「萩日吉神社の児持杉」が入っていないのは、やはりあれは鳥居の中にあって、神社のものだからということなのでしょうか。
 大カヤがこれだけ立派だと、他の樹も気になってソワソワしてきます。
 ときがわ町の深い森林の中にでも、どこかに現存しているのか、いないのか。
 長い歴史に埋もれたミステリーを感じますね。

 老いたるカヤにお礼を言って、またソロソロと危ない道を戻って行きました。


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「西平のカヤ」
 埼玉県比企郡ときがわ町西平
 樹齢:1000年
 樹種:カヤ
 樹高:16メートル
 幹周:6.6メートル

4コメント

to-fu  

サイズもさることながら、どうしてもこんな山奥にカヤの木を植えたんだろうと考え始めると実に興味深いですね。かねてからカヤの木は開けたところに立っていることが多いけど木そのものは結構ホラー系だよなと思っていましたが、この山奥にそびえる姿は不気味さを醸し出していて良い意味でイメージどおりです。最後のモノクロのカットなんて堪らないですね。

それにしても流石の嗅覚、恐れ入ります。先の児持杉にこの山奥のカヤ。ついつい単純なサイズや国の天然記念物であるとかいった名声に釣られて目的地を決めてしまいがちな自分だったらこの二本に注目できなかったんじゃないか…なんてちょっと悔しかったりします。

2018/08/26 (Sun) 17:46 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

to-fuさん>
周囲にカヤの樹が見当たらないので、これもきっと植えた樹なのでしょう。
ついでに、これだけ大きい樹なのに周囲に子孫がないということは、雄の樹である可能性も考えられますね。
ギリギリお寺や神社から「近く」と言える位置にあるので、境界木としてその辺にない樹を選んだのかもしれません。

シイほどではないにせよ、カヤも結構大きさ以上に重々しさと迫力をぶつけて来る樹種ですよね。
この樹も、他の方のサイトに、近くのが怖いと感じられるかも、などと書かれていました。
実際にはそれほど怖い感じはなかったのですが、僕自身、シイやカヤなどの里の樹をフレンドリーに感じ始めているのかもしれません。
まあでも、シイの巨樹は怖いことがあります……。

こうした地味だけど良い存在に気づくことができるのも、先人の方のおかげだと思います。
そう、一覧表でサイズで選別するのではなく、本当に面白い樹のとこに行ってみたいし、周囲環境込みで心地良いところに身を置いてみたいと思ってリサーチするようになりましたよね。
でもやっぱり、押さえておくべきところは押さえないと! と僕も思ってしまいます。
そういう意味でも各地方に何度か訪れたいんですが……相当な鉄人になってしまいそうですね。笑

2018/08/27 (Mon) 05:09 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

片側の枝が失われているとはいえ、見事な枝振りですね。
幹周も立派なカヤですが、その佇まいというか枝振りを含めたその姿に目を奪われます。
樹齢1000年の重みも感じることができそう。
それがまたこういう林の中にひっそりと存在していることがより印象的ですよ。

慈光七木、他の6本はいったい・・・。
全部樹種が違うし、それぞれに何か逸話がありそう。
「都幾川慈光寺実録 外伝」なんかがお寺の蔵に収蔵されてて、実は・・・なんて(笑)。
長い歴史に埋もれたミステリー・・・ほんと気になりますね!

2018/08/27 (Mon) 21:58 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

RYO-JIさん>
周囲が杉や檜の林に囲まれているので、比較的風当たりは和らぐのでしょう。
反面日当たりは悪いと思うのですが、おそらくカヤはそこそこ日陰耐性があるのだとも思います。
藪の中から現れるこの姿には、なかなかの威圧感がありました。

七木とか言われてしまうとコンプリート欲が湧いてしまいますよね。
おそらくそういう人も多かったと思うのですが、お寺側でも不明のところを見ると、無くなって久しいのか……。
それぞれに興味深い名前がついてるので、これまで会った似た巨樹を思い浮かべて補完するとしましょう。
「椎樫」ってのはこの間みたいな異種合体木? 
楽しいですね。 笑

2018/08/28 (Tue) 14:01 | EDIT | REPLY |   

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