巨樹を訪ねる 文武館跡のけやき群

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K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 夏の休日、日帰りできてほどほどの遠出感が欲しい。
 ということで、再び茨城県の最北・大子町に出かけてきました。
 大子町のことを書くと毎回そうなってしまいますが、自然豊かな環境で、季節がら鮎釣りの人なども出ております。
 そう遠くない範囲に巨樹も複数マークできる。
 その中、街中の小学校に大きなケヤキがあると知り、行ってみました。
 「文武館跡のけやき群」です。
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 ……と言いますか、大子の街中をスナップして歩いていたら小学校に出くわし、あれっ、そういえばここに巨樹あったんじゃなかったっけ? ……という流れでして。
 大子町の巨樹はいずれ回るだろうし、今回必ずと決めていたわけではなかったのですが。

 大子小学校は小高い丘の上にあり、僕はどうやら裏口の方から登ってきた格好だったようです。
 頂上に到達すると同時に、すぐにケヤキの大きな姿が目に入ってきました。
 その脇にある蔵のようなものが「文武館文庫」という史跡とのこと。
 解説文によれば、文武館とは、水戸藩が文教政策として各地に郷校(ごうこう)の一つとして建設したものだそう。
 1850年に建設、大子地方の教育の拠点だったそうです。

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 そこから始まって、現在はこの大子小学校にテーマが受け継がれている。
 日曜日でしたが、おそらくここはひとつお断りの上、歩き回らせてもらったほうが良いのかな……と、校舎の方まで行ってみても人影がありませんでした。
 まあ、ケヤキは裏口の至近であり敷地の一番端にありますし、校舎にむやみに近づかなくても見ることができる。
 鍵付きのゲートを強行突破したわけでもないし、怪しい者ではないということは胸を張って言えるので大丈夫。
 ということで、つかの間、「怪しい者ではない者の歌」でも歌いながらケヤキを楽しませて頂くことににしました(そういうところが世間様からすれば最も怪しいですよ)。

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 校庭にあるケヤキの巨樹は3本。
 うち、大きな2本が県の天然記念物指定になっている模様です。
 まず、最初に目に入った、校庭の端にあるのが最大幹周のこちら1号樹(と、順番は勝手につけています)。
 解説板によると幹周9.7メートル。
 環境省データでは7.8メートルとあるのですが、どちらが本当か目視では判別が難しいところ。
 2メートルも差があるというのは、何とも……ですが、感覚的には8メートル以上10メートル未満というところかなと。
 意味が無いような形容ですが、この大きさを前に考え込むと、あえてそう言っておきたくなるのです。
 うーん、伝わりにくいでしょうね、この感じは。笑

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 県指定の天然記念物を示す看板があります。
 主幹が折れていて樹高は高くなく、片側には枝がもげた跡だと思われるウロもありますが(モノクロ写真に写ってました)、脇から伸びた枝の勢いは良く、堂々とした体躯でそびえています。

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 まことに立派なケヤキです。
 そして……向こうに見えているのが、校庭の中ほど、島のような築山にある2号樹です。

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 おお、こちらもなかなかの巨樹ぶりです。
「つよく 大きく たくましく」。
 まさにその標語はケヤキの巨樹を体現しつつも、小学校にふさわしい。
 同じく小学校の巨樹、「東根の大ケヤキ」を思い出しました。

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 解説文によれば幹周7.5メートル。
 こちらも環境省数値と差があって、それによれば6.2メートルだそう。
 1号2号とも根の発達が大きいので、計測が難しいのでしょうか。
 すぐ近くにある別種の樹を押しのけるか飲み込むかしてしまいそうな関係でいますが、欠損もなく、健康そう。

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 築山をがっしりと掌握するかのように立っていて、その景観丸ごとが緑に彩られて美しいです。
 校庭にこんな風景があるなんて良いなあと惚れ惚れしますね。
 我々は遠慮して踏み込んで行きませんが、おそらく子供たちはどんどん登ってって、築山もケヤキも、遊び場になってることは想像に難くない。

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 一方で、一番校舎に近い位置にある3号樹。
 他2本に比べると少々小さく、幹周5メートルクラスでしょうか。
 こちらはケヤキの大敵である菌類にやられたものか、外科手術を受けた跡が痛々しく、一番下の大枝も無くなっています。
 流石のケヤキでも、他2本のように堂々たる巨樹に育つには苦難を乗り越えねばならないということなのでしょう。

 このケヤキ3本になぞらえれば、とてもいろんなことを感覚的に示すことができそうですね。
 先生、ナントカってどういう感じ? あのケヤキを見なさい。とかね。笑
 もっとも、遊び場という以外に、子供達がこの巨樹たちにどれほどの思考を働かせているか、そこにはあまり期待できないかもしれません。
 自分がそうでしたし……とにかく遊ぶことばっかりに夢中で、他のことは眼中にないですもんね。

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 戻って。
 ケヤキは落葉するので、冬と夏では姿が全然違ってくるでしょう。
 緑をたくさん抱えている夏場の姿は、青い空と白い雲にバッチリ良く似合う。
 今は感じなくとも、きっとこれは子供たちの記憶に残ると思います。
 「俺たちの小学校の校庭にはでかい樹があって……」と、大子小学校はまずそう語られるはず。
 語るうちに、これらの樹の大きな姿が、だんだんに存在感を増して心の中で蘇ってくるのではないでしょうか。

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 当日はかなりの酷暑日でしたが、大ケヤキの木陰はびっくりするほど涼しく、風がよく抜けて行きます。
 さわさわさわ……という、軽いケヤキの葉がそよぐ音も、ものすごく心地よい。
 気づくと、周囲を囲っている石に座ったまま目を閉じていて……5分ばかり昼寝をしていたようです。
 じんわり視界が戻ってくるのと同時に、意識がリフレッシュする感じ。
 この木陰だけでも、本能的に安堵し、巨樹とはありがたいものだと感じるには十分です。

 さて、怪しげなくちょっと立ち寄るだけのつもりが、短い昼寝まで楽しんでしまいましたが、そろそろ行きます。
 ありがとう。
 酷暑の中で快適な居場所を提供してもらったことに、思わずそうお礼が出てしまいました。
 最大の〜とかいうものではないけど、樹がもたらす心地よい環境という点では、記憶に残る巨樹となりました。
 再訪するなら、こりゃあ、また夏かな。

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 解説文。
 文武館創立時には、すでに巨樹だったことでしょう。
 これらの樹を始め、小学校周囲や大子町のあちこちに大きなケヤキが育っており、もともと多く自生する土地なのだと思いました。
 ふらっと寄った割に、良い収穫でした。



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「文武館跡のけやき群」
 茨城県久慈郡大子町 大子小学校
 樹齢:約500年
 樹種:ケヤキ
 樹高:30メートル/25メートル
 幹周:7.5メートル/9.7メートル(案内板数値)

4コメント

to-fu  

何故かケヤキは小学校、小学生が似合いますね。
僕が持っている兵庫の巨樹本の表紙がケヤキの巨樹に乗った大勢の小学生が笑顔で写ったスナップ写真で、その写真が思い浮かびました。威圧的な巨大さではなく、ぬくもりを感じる巨大さとでも言いましょうか。遠路はるばる会いに行った先にこんな巨樹がいると、良い休日だったなあなんて気持ちよく帰路につけそうです。

しかしこの大子町…結構気になってきたものでつくばからだとどれくらいで行けるんだろう?と調べてみたら、軽くウチから敦賀くらいの距離があって吹き出しちゃいました 笑
巨樹巡りを始めてからというもの100km、200kmが大した距離じゃないと感じるようになりつつありますが、これ絶対異常ですよねえ…楽しいからいいんですけど。

2018/07/30 (Mon) 23:18 | EDIT | REPLY |   
狛

狛  

to-fuさん>
ケヤキの持つ父性と包容力みたいな感じが好まれるのでしょうかね。
試しに、別の樹だったら……と想像するんですが、やはりこうしてそびえている姿は、ケヤキが一番良さそうです。
逆に一番合わないのは、これはもうダントツ裏杉。原因不明で年に何人か子供がいなくなります。

実は、この直前に見たケヤキ並木みたいなのが良い状態ではなくて……まあこれは一個の巨樹という観点では見るべきではないものなのかもしれませんが、ここへ来ることができてなおさらホッとしました。
やはり、環境と響き合うことで双方が好ましくなるというものなのですね。

大子町はなかなかオススメしたい良いところです。
自然に適度に触れてシャモでも食って……いやしかし、ここまできたら矢祭に抜けて一気に福島を攻めたくなってしまいますね。笑
先日の「法龍寺の大イチョウ」も大子町ですが、これはほぼ栃木だし。笑
県内といえど、うちは最南端なので大子まで行くとなかなかの走りごたえですが、田舎国道を流してくのは結構いい気分なんです。

いい気分なのは結構ですがね、自分の中の距離計が明らかにぶっ壊れている。
100キロ台だともうあまり考えず、じゃあ行こうって言うし……。
個人的感覚では、茨城の奥地と房総半島の先端部は同じくらいの手強さです。笑

2018/07/31 (Tue) 10:00 | EDIT | REPLY |   

RYO-JI  

こんな立派なケヤキ達が校庭にあるってどんな気分なんでしょうね。
子供心には何も響かないかもしれませんが、知らず知らずのうちに
「つよく 大きく たくましく」育っていると思います。

ついウトウトと昼寝までしてしまうだなんて、ええ、わかりますとも。
こういう巨樹に巡りあえた幸福感。
幹周2mくらいの差なんてもはや誤差の範囲に思えます。
そんな仔細なことより、この場の心地良さを満喫したい。
そう思えるような場所があって羨ましくて仕方ないです。

あと今度「怪しい者ではない者の歌」を教えてください(笑)。
小学校に限らず幼稚園から大学まで、子供達の学び舎にカメラを持ってウロつくのが怖いんですよね。
こういうご時世ですから、変にキョドってしまって余計に怪しく思われそうで。

2018/08/01 (Wed) 22:00 | EDIT | REPLY |   

狛  

RYO-JIさん>
僕の学校も田舎でしたが、こんな樹はさすがになかったですね。
我々とて、比較対象を得て改めて巨樹の大きさに驚くようなところがあるわけで、それを持たない子供達はしっかりと見ていない可能性が高い。
けれども、おそらくこういうのは後から効いて来るものだと思いますね。

木陰になっているというだけのシンプルな状況なのに、ものすごく心地良かったです。
これこそが巨樹だよなあ……と思いつつ、長距離運転とスナップの少しの疲れのためにうたた寝……。
まあ、それだけこの巨樹に心許すことができるという証拠でもあると思います。

別によそ様のお子さんを撮たって面白くも何ともないんですが……最近はうるさい世の中になってきましたからねえ。
歌はですね、例えばこう、
「あやしいものでは、ございません、
  あやしくなんて、ありゃしません。
   そういうこととは、これ一切、
    かかわりあいがありません。」
こういうようなフレーズを、ビートルズのカム・トゥギャザーに似た曲に乗せて歌ってみてください。
きっと失敗しますよ。

2018/08/02 (Thu) 15:06 | EDIT | REPLY |   

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