西日本長距離車旅 兵庫から奈良へ

K-1 / CZ Ultron 50mmf1.8 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR
5時前に目が醒める。今朝もフォレスターの荷室で。
しかし寝心地はとてもよく、背中とか腰が痛いなんてことは全然無いし、疲れもほとんど取れていると思います。
一泊ちゃんとしたホテル泊を挟んだので、もう車中泊には戻れないかと思いましたが、大丈夫でした。
この質素さがたまらない感じがありますね、車中泊は。

昨晩は寝袋だけでは深夜に寒くなってきて、アルミシートを取り出しました。被災時なんかに活躍するサバイバルシートとも呼ばれるあれです。ペラペラなんだけど、これ一枚かぶせるだけで嘘みたいにあったかい。
しかし欠点もあって、朝起きて触ってみると、シートと寝袋の間がすごく結露しています。車中が続くようなら、いずれ寝袋も洗濯しないといけないでしょうね……。
最悪だったのは、安眠するためにはカルシウムを摂らないとね、と、車中で牛乳を飲んでたんですが、ちょっと置いといた隙にパックが滑り落ち、シフトレバーの辺りにぶち撒けたこと。
車内騒然。ひどいよなあ、重力ってやつは。

夜明けを待たずに走り始めると、瀬戸内市というだけあって、山のシルエットと静かな内海が織りなす美しい瀬戸内の風景がみるみる広がります。
車道から見下ろす風景がとても綺麗で、ドライブレコーダーの映像が良かったはずなのですが、どうやら上書きされてしまったらしい凡ミス。きっと牛乳のせいです。勿体無かった。
とはいえ豊かな風景には心惹かれたので、漁港にちょっと立ち寄って撮っていくことに。
鞆の浦同様、瀬戸内の風景はマニュアルレンズの出動を煽り、わざわざまた交換して撮ったりして。

今日は曇りのよう。優しげに照らす朝の光が綺麗です。道にはバスを待つお遍路さんがいたりして。
トイレ休憩で立ち寄った道の駅では、ミニバンのおじさんに声をかけられました。
「(こちらのナンバーを見て)水戸から来たの? 本当に?」
「フェリーで九州まで渡って、車で戻るんです。車中泊ですか?」
「そう、うちもね」
ミニバンの雰囲気は、まださっき起きたばかりという感じで、窓にシェードが貼ったままです。諏訪ナンバー。
「長野からですか」
「そう、定年してやることがなくなっちゃってね、こうしてあちこち回ってる」
「結構な距離でしょう」
「何キロか忘れたけど、今回ももう1500キロくらいじゃないかな」
「すげえ、僕はまだ1100キロくらいです」
「それでも相当なもんじゃない。帰るまでにはすごい距離になるでしょ」
などと、二人でハハハとか笑って。
おじさんは若い頃サーファーだったらしく、うちの地元の灘にもよく来たらしい。きっとこういう旅行にも慣れてるんでしょう。
季節がもっと進むと厳しいこともあるけど、気負わず、自分好みなペースで進めるのが車旅のいいところ。
ほんのちょっとの休日しかなくて急いで行って急いで帰って来るのは、その点、旅とは呼びがたいかな。
明日の大目的のために今日は真面目に車を飛ばさないといけない日ですが、車中泊の同志のおじさんに出会ったことも手伝って、それだけでは勿体無いと感じ、ちょっとここで巨樹のデータブックを開いてみました。
考えてみれば兵庫県なんてちっともゆかりがないので、普段からもどんな樹があるのかチェックしていなかったのです。
偶然、30分くらいのところに注目に値する樹があることを知りました。
ビャクシンらしい。見にいくことにしました。

法雲寺のビャクシン。この旅で初めての楠以外の巨樹(おそるべし西国における楠勢力)。
地上1.3mの高さにおける幹の太さでは、日本一のサイズを有するビャクシンとのこと。
勝手に木戸を開けて見に入ったのですが、お坊さんに見つかってお説教されたら嫌だな、でもそれもいいかな、そしたらそのまま奉公人にでもなろうかなあ、ビャクシンの枯葉を掃いて……と思ったけど、ビャクシンは常緑樹なのであんまり仕事がなさそうだし、やめとこう。
これを見たことで、地元にある「沼のビャクシン」ももう一度撮り直したくなってきました。

さて。
予定より先に進んでいるのはいいけど、それと引き換えに昨日から風呂に入っていないのです。
独りで動いているとこういうところがズボラになってくるので、気をつけないといけない。
そういうわけで、今日のこの後の予定は、移動。そして必ず風呂。そう決定しました。
地味すぎる。しかし仕方なし、風呂は大事。
値段、営業時間と色々調べてみて、ルート上で絞っていくと、案外1、2軒になってしまうものです。
必ずしもいい温泉である必要はなし、スーパー銭湯みたいな方がむしろ便利だったりもする。なにせ、駐車場……。

結局、神戸まで走ってしまうということで決定しました。湾岸地域にでかいそういう施設があります。
この道中は高度に都市化されており、当たり前だろ、あの「神戸」だぞ水戸ナンバーよ、ってなもんでしょうが、車窓風景がつまんないんだよ。3車線もあるのに渋滞ひどいし、どうにかなんないの?
というわけで割愛、に次ぐ割愛。
スーパー的な入浴施設は巨大で、一応温泉も出てるの? 正直よくわかりません。
雨がしとしと降る中での露天ゾーンは気持ちがよく、なんか水深10センチくらいの寝て入るところがあるんですが、そこに寝そべって、気づいたら1時間以上も入浴していました。疲れもあるのか眠ってしまったみたいで。
施設がでかいのでごはんも食べられます。かにクリームコロッケ定食でした。

さっぱりした身でそのまま兵庫県を走り続け、高速に乗り、進め進めで奈良県に突入を試みます。
明日は写真ブログ仲間のRYO-JIさんと会える予定。巨樹写真の貴重な同士なのでとても楽しみです。

奈良も走ったことはないわけで、せっかくだから文化に触れたいじゃない、と、博物館とか美術館に行ってみたい気分になるも、奈良市内、奈良公園を走ってみると、ものすごい人。そして駐車場が高い¥を取るのに満車。当然路肩にも停められず、半泣きで脱出……。

RYO-JIさんからメールをもらっており、車中泊にうってつけの大型の道の駅を指示してもらえました。奈良市内からの道中はかなりの山道。奈良というのは、市街からちょっと離れると即こういう険しい顔をするところらしい……。

駅に着いてみると、レストランやフードコート、コンビニ、なんと温泉まであります。広大な駐車場に停めて、ゆっくりしよう。
まだ明るかったので、フェリーで読みかけていた文庫本を開く。小説はクライマックスに。
フードコートでごはん(大盛りのソースカツ丼、キャベツもたくさん)を食べ、ロッテリアでオレンジジュースを飲みながら、一気に読破まで持って行きました。
考えてみると、夜の車内は読書に向く灯りがないので、なかなかこういう時間も得難いものです。確かな満足感。
夜は……ちょっと予想できた展開だけど、各種車好きバイク好きのあんちゃん達が集合。
レーシーにいじった軽をずらっと並べたり、お金を貯めて買ったのか、排気音がブリブリうるさいスポーツカーを乗り付け、何時間でも眺めてだべっている。外もそろそろ寒かろうに。
なんだろう、見て欲しいのか、わざわざウチ(フォレスター)の隣に乗り付けてきて集会するのは勘弁して欲しいです。
ラジオも湘南の風の若旦那がオザケンについて語るという、私の生存活動に対して正直どうでもいい内容だったのでむかついて消して、あんちゃんたちを観察するに、アスファルトに座ってうふふあははとやっている彼ら彼女らは、そんなにスレたようには見えません。
そうやって遊ぶのが好きなんでしょう。麻薬をやったり、ナイフファイトをしたり、こちらの車をパイプ爆弾で襲撃してきたりする気配は全くないので、そこは安心です。
あとは、トヨタ86を結構な台数見かけます。「86」ってナンバーを90パーセントの確率で取りたがるのは近畿地方でも一緒らしく、「27」とかにもしろよ、いいだろうがよ、とか思うけど、きっと若い人でも買いやすい価格設定でかっこいいから売れてるんだろう。おかげで水平対向エンジンがまとまった数出荷できたわけなので、まあ許してやる(偉そうに)……。
22時過ぎにはたむろしていた彼らもいなくなり、静かに消灯、おやすみなさい。
(続く)