西日本長距離車旅 秋吉台へ

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K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 今回はつまんないぜ。


 毎朝目がさめると、はっ……ここは一体どこなんだ?! と当惑する。
 今日は、山口県での朝。
 そうだ……知ってる。
 車中泊からもぞもぞと目覚め、おうち(=フォレスター)を片付けたら、また走り出す。そう、出会うべき樹がある。またもや楠ですけれどもね。
 しかし今日のは、写真ブログ仲間であるところのatushiさんがご自身のブログで取り上げておられたもの。彼の写真からしてとても魅力的に見えたので、これは是非自らの目で見て撮ってみたいゾーとか、思って。どうしても。そう思ったの。

 その名も「川棚の楠の森」。一本の樹でありながら「森」と呼ばれる楠には福岡でも出会いましたが、渡って本州、山口県でもそう呼ぶことがあるらしい。
 有名な樹であり、資料では周囲が公園として整備されているとのこと。
 情報ソースとしてはいつもの巨樹の書籍を参照したのですが……先生、また所在地間違ってんですけど。
 付属している地図らしきものが本当に「らしきもの」の範疇を出ず、古い本なので市町村合併前であるところに不安を覚えつつ住所をカーナビに入力して行ってみたものの。

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(ここかよ? どこにそんな樹がある? ええ?)

 まあ、もう慣れましたよ、こういうの。
 ちょっとばかり隣の区画にあるとか、そういうことはこれまでも毎回のようにあって……いや、待て、結局本当にたどり着くまで、本にあった所在から30分も走ったのはなぜなんです?
 結局、着いてみれば大変に立派な公園が整備されており、これになんで辿り着けなかったのか、いっそ本の地図なんか見ないで道路標識を探して行けば良かったんではないのか、もう。

 機嫌を直して「川棚の大楠」。
 この旅行が始まって実に8本めの楠の巨樹、8連続の楠ばっかりですが、ここへきて「面積」という新要素で驚きを与えてくれました。
 異常な枝張り面積の広大さに圧倒され、どうしたらいいんだと頭を抱え抱えうろうろ回って、結局1時間あまりも撮り続けてしまいました。
 気候も安定していたのでペンタックスのデジタル一眼レフが搭載するあほ機能である「リアル・レゾリューション・システム」も投入。
 ほんのちょっとでも動いたらいかん、息も止めろ、願わくばこの世の風全てやまん。
 繊細に素子をずらしながら4枚の画像を撮影、それを一枚に合成することによって信じがたい超精細画像が手に入る……。
 すごいテクノロジーなんですけど、言ったように少しでも画面に動きがあると破綻、成功してもRAW一枚で230メガ、現像したJPEGでも50メガ以上という超重データでコンピュータを追い詰めるという、まさにあほ写真を、撮影しましたよ。 
 当然、そうです当然撮る前から知ってますけど、そんな写真ブログなんかには載せられません。
 しかしながら撮って良かった、と言い放っておきましょう。
 あとで是が非でもプリントせねばと思う写真は、写真撮りとしては何よりのお土産なのです。

 せっかく初上陸した山口県、なかなか来られないこと明らかな山口県。
 遠方の地では余さずご当地の巨樹を撮ろうと努力するのですが、これは同時にいろんな観光地や美味しいものや……味わっておきたい様々な楽しみを諦めなければならないということです。
 しかし山口においては、幸いと言えるのかどうか、この他に是非と思う巨樹は見当たらず。
 ……だったらこんな私も観光してよろしいか?
 よろしいよね?
 というわけで、有名な秋吉台を目指すことにしました。いっぺん行ってみたかったんだよ、ここ。

 川棚から秋吉台までは、確か1.5時間くらいの道のりだったはず。雨模様になったこともあり、ゆったりと走っていきます。
 と、道中、全くの不意に「石柱渓」なる標識に出くわす。字からして景勝地であることは間違いないのですが、行くべきかどうかは迷う。しかし、考えて見ると、ここでこの横道に行かないとして、この後の生涯、ここを再訪することはあるのだろうか?
 旅の醍醐味とは、一期一会ではなかったのか。
(……)
 路肩に停めたマイ・カーのハザードがチッカチッカ言うのを聴きながらしばし考え、そして、秋吉台にセットしたナビを一時中断し。
 「石柱渓」を指す標識を辿るサブクエストに入ったわけなんですが……すぐ後悔した。
 道はみるみる、できれば走りたくないような山道に変わっていきます。

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 おっかねえ。山鬱蒼として、昼なお暗い。
 おわかりでしょうか、まだ10時だというのにオートにセットしてあるヘッドライトが点灯しております……。

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 標識発見から1時間弱山道を走って、石柱渓とやらにたどり着いたんですが……。
 こういう山中険しい秘境めいた景勝地には、「だからこそ」の感動を求めたいところ。
 なんですが。

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 これがまた……さっきの山道にも増して一段と山鬱蒼として怖く。
 変なストーンヘンジめいた道祖神? ファルス? 的なこういうのがあったり、朽ちたお堂に誰もいないのにろうそくだけが灯っていたり(!)……。

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「木屋川水系白根川支流の大州田川にある渓谷で、全長2キロメートル。白亜紀末期の石英斑岩を浸食し、不等辺の四角形 - 六角形の柱状節理が見られ、奇観を見せることから国の名勝及び天然記念物に指定されている(1926年)。また、この節理が名の由来に基づく。また、小規模の瀑布が多い。画家の高島北海が紹介したことにより、名を知られるようになった。」

 ……ウィキペディアより。
 しかし、前日の雨で渓流は濁流になっており、安全柵のない通路はブナかなんかのでかい腐葉が積もって滑る。
 陰気で、怖すぎて、100メートルで引き返しました。
 この僕が引き返すので、どれだけおっかねえところだったか、推測ください。

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 ギンリョウソウも生えてるし。
 思わずこんないかれたコントラストのモノクロにしてしまうよね。
 次行きましょう、次。


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 気を取り直して走って……回復しない天候の中、秋吉台にやって来ました。
 カルスト地形と呼ばれるそこは、良くも悪くも、全く予想していた通りの土地でした。
 緑の草原が延々と続く。ポツポツとそこに石灰岩が散らばっている。そこに風が吹いている、いつも。そんな感じ。
 風景のスケールに驚かされ、ついつい歩いて行ってしまうんですが、2キロも行くと、それが極めて不毛な行為だったということに気がつき、ああまた戻るにも2キロ歩くんよね……と、4倍不毛に思う。

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 思い出したのは、大映映画の「安珍と清姫」で、安珍を清姫が追いかけるシーン。
 あれね、頑なに僧という身分を守ろうとする安珍を、清姫は最初弄んで一緒のおふろに入ってきちゃったりして、「何が仏法! あなたも所詮はただの男よ!」みたいな。
 市川雷蔵の安珍は非常に青白くて気の毒だし、若尾文子の清姫は可愛いようなエロいような、そんな感じでいいんですが、やがて双方愛してしまっているということに気付きつつも運命的にすれ違い続け……
 「安珍さまーっ!」「清姫サマーッ!」と互いに互いを追いかける、海から山からほんと彷徨いながら追いかけ続けるというやきもき全開のシーンの中で、この秋吉台も映ってたのをよく覚えてます。
 考えてみれば日本中の秘境っぽい風景でロケが行われてて、徒歩での追いかけっこでそんなわけねえだろう、大変に大げさな映画であると思いつつも、そうであるがゆえに熱っぽい夢のようでもあり。

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 行ってみると、まさに非現実的世界。
 撮ってて、モノクロにするといいと思いました。
 面白い服装の人を立たせたりすると、植田正二の写真のようになるんじゃないかな。
 いや、いくら見渡しても、徒歩でうろついてるのは僕ただ一人だったんですけども。

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 現代としては、行き倒れたり彷徨ったりすることもなく、草原を貫通する秋吉台スカイラインを颯爽とドライブすることができます。
 ぐんぐん走れば走るだけ、この地のスケールの大きさを感じます。
 なかなか直接写ってはいませんが、淡々としたドラレコ映像でそんな感じをつまんでみてください。
 ほんと淡々とした中、また粒の大きな雨が降って来ました。



 夜中に見てると眠くなるでしょう? 寝てもいいんだぜ。
 あっ、ナンパかなんかですか?

 絶景には変わりないので、しばし車を停めて撮ってみる(冒頭の写真)。
 後で見せた人全員に言われましたが、クルマのカタログみたいな写真ですね。
「妥協のない走りを知る貴方へ。 スバル・フォレスター、誕生」

 誕生、って、もうすぐフォレスターはモデルチェンジなんですけど。
 とか、どうでもいいこと言ってないで、どんどん走って次は洞窟に入ってみたい。
 秋吉台の地下……すなわち秋芳洞に行ってみよう。
 そう思います。

(続く)

4コメント

さかした  

秋吉台懐かしいなー。
修学旅行で行きましたよ。
ただっぴろいところに石がゴロゴロ埋まっていて妙な感動を覚えたな(こなみ
とりあえず安珍と清姫チェックしてみよ(雷さま大好きおばさん)。

2017/11/25 (Sat) 00:20 | EDIT | REPLY |   

狛  

さかしたさん>
おお、こんなところに修学旅行で。
洞窟は楽しかったのではないですかね、でも、この原っぱは……いや、僕は楽しかったんですよ?
広くて何にもないけど、自由に歩いていけないって、小中生からすると変な場所だなと思いそう。
安珍清姫は率直に楽しめる映画だったですよ(笑)。
イマジネーションを絵にするということに臆病になってないところが素晴らしいし、俳優さんもハマり役だと思います。

2017/11/26 (Sun) 17:36 | EDIT | REPLY |   

atushi  

ぬれせんべいは思ったよりも濡れていた!
でも旨い!
どうも、ごぶさたしてましたatushiです。

いやぁ、川棚のクスの森を文明の利器を利用しての上空画像。
「リアル・レゾリューション・システム」なる機能。
僕とは違い色々な方面から攻めてらっしゃる。
そして狛さんほどの人でも難しいんですねえ、川棚のクスの森。

あぁ、秋吉台にSUVは映えるなあ。
いつだったか昔、ポルシェが颯爽と秋吉台を走り抜けて行った光景は映画かと思いましたよ。
年に数度チャンスがある雪景色の秋吉台を狙う写真愛好家達は今シーズンは行けるのかとやきもきし出す時期でしょう。

石柱渓は僕も二度行った事がありますが
ほとんどの山口県民はその存在すら知らない人ばかりだという場所ですよ、ちなみに。

あっ、あの日あの時、狛さんの後ろ姿を見送った時に
俺もどっか行きてえなあ・・・と思ったので
車中泊を利用して長崎へと行ってきましたよ。
これがまたすごくいい旅で狛さんのおかげだな、と。
ぬれせんべいもですが、ありがとうございました。

2017/11/27 (Mon) 02:22 | EDIT | REPLY |   

狛  

atushiさん>
atushiさん! 俺、心配してたんですよ!?
もうね、鰐に喰われたんじゃないかって(どうして)。
atushiさんご登場の旅日記を書くのが迫っているので、どうしようかなとも思ったし、ご無事なようで何よりです、うれしいです。

川棚の大楠は、ほんと気付かせてもらってよかったなと思う、すごい樹でした。
山口県というのは僕のところからは非常に行きづらいところにあるので、何もとっかかりがなかったら、もっともっと訪ねるのが遅くなっていたはずです。それだけでも感謝です。
しかしあれは……ほんと、どうやってあの樹のすべてを伝えられるもんだか、と悩みますよ。
先日巨樹の写真集を見ましたが、プロの人でも幹しか撮ってなくて笑った。

秋吉台のドライブは流石に気持ちよかったですね。
車好きな人たちなら、みんなきっと、俺の車がいちばんかっこいいと思って走ってるでしょう。
まあそれに比べて石柱渓は……まあ、石柱渓が悪いわけではないんですけどね(笑)。

僕自身も他の人が旅に出てるのを聞いたり読んだりして、どうもうずうずして出かけることがよくあります。
いいですよね、旅してる人って。
またね、長崎って土地がいいんだ、あーほら、そう言うから、こっちも行きたくなって来たじゃないですか(笑)。

旅日記楽しみです。
ぬれせん、おしょうゆが合うかわかりませんでしたが、うちらはもう容赦ない濃い口の民ですんで、パワー押しで。
ありがとうございます(笑)。

2017/11/28 (Tue) 00:29 | EDIT | REPLY |   

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