巨樹を訪ねる 川沿いの洞杉

K-1 / SIGMA 28mmf1.8 EX DG / FA35mmf2
ついに目標だった洞杉群へとたどり着きました。
もちろん、そこに着いたということは、すぐに感覚することができます。
あまりにも特徴的な樹影は遠くからでも目立つし、それ以上にある種の気配に振り向かされるようなところがありました。
洞杉は幾本も確認されていますが、その代表と言ってもいいであろう樹が、まさにこれです。
(この樹についても全く無名で、案内板には「観察しやすい洞杉」とか書いてありましたが、それではあんまり……。
ということで、とりあえず当たり障りない名前で呼ぶことにした次第です)

「杉」と一文字で書くにはあまりにも異様な姿、そしてただならぬ巨大さと迫力。
圧倒的な存在感です。
何がこの樹の身に起きたのか、どんなものすごい力が作用して、このような姿に変貌したのか?
考えれば考えるほど想像を絶している……超常的な疑問に頭が支配されてしまいます。

謎に満ちた洞杉の誕生には、根元に見られる大きな石が一因を担っているとされています。
この石はどこから来たのか?
前述の……この時もすぐそばを大きな音を立てて流れている急流・片貝川が運んだものです。
雪解けの豊富な水気があり、その石の上をまず苔が覆う。
その苔の層を土壌がわりに杉が芽を出す。
生育していくうち杉は土を求め、石を避けるように長く根を伸ばし、抱え込むような奇怪な姿に変わっていく……。

幹や枝にも、平野では考えられない強烈な力が働いていることが一目瞭然です。
その形態は様々ですが、どれも何かを避けるかのように大きく曲がりくねっています。
このような曲線的な姿は、かつて山形の山奥で行き着いた「幻想の森」の老杉群でも似たものを見ました。
もちろんこれは、大きな重圧としてのしかかってくる積雪によるもの。

特にこの樹に見られるように、ど真ん中の幹がなく、籠のように幹というか枝というか……そういうものが立ち上がっている、これが洞杉特有の傾向だそうです。
おそらく、本来は一本杉のような形態だったものが積雪の重みで折れ、それを避けて支幹が伸び、また雪が降っては曲がって伸び、また降って……という風に、こういうことになったのでしょう。
実際、今現在でも折れたような(つまり近年折れたばかりというような)傷ものの枝もあり、そこからひねくれて育ったことが明らかな箇所もあります。
なんという逞しさ。
……というか、そこまで過酷な目に遭わされて、なぜ枯れないのだ、あんたは。

ものすごい形相の根・幹・枝のディテールを持ちつつ、全体を見ると、不思議な形にまとまっている。
見事な巨樹です。
樹齢はよく分からないそうですが、この規模の洞杉はみな数百年〜千年程度は生きているとのことです。
本当は柵があって、そこから先は立ち入りを自粛しないといけなかったようですが……すいません、夢中で一周撮ってから気づきました(嘘くさく聞こえるかもしれませんが、ほんとです。反省)。
雪のせいか、ロープもなかったし。
さらには、本来木道もあって、その上を歩くようになっていたようです。
これも完全に雪に埋もれてしまって全然気付きもしませんでした。
まだしばらくは人も来ないと思いますし、今回だけはお許しを……と、そんな風に。

「川沿いの洞杉」
富山県魚津市三ヶ
樹齢:不明
樹種:スギ
樹高:25メートル
幹周:10メートル以上(目測)