佐渡へ 宿根木集落

LX / smc-m 50mmf1.7 , 28mmf2.8 / Presto400
実際行き当たりばったりな我々の佐渡行でしたが、数少ない訪問予定ポイントのひとつが、宿根木(しゅくねぎ)集落でした。
狛が以前建築関係の雑誌かなんかで読んで興味を持って記憶しており、ここにしかない建物がみっしりとした路地に集結しているという、路地マニアは一度は訪れなければならない、ユー・マスト・ヴィジット、ビフォア・ユー・ダイ、ってなゾーンです(なんで英語で言ったのか?)。
お寺もそうでしたが、離島であることによって、そこにしかない風土が生まれている。
それをこそ味わいに来たのですね。
ついでにいうと、フィルムカメラも、ここの風景を撮るために持って来た次第。
ここは銀塩モノクロでしょ、そういう予感のする場所です。

とは言え、来てみてまずびっくりしたのは、観光客の多さです。
広くなく、走りやすい佐渡ですが、清水寺や長谷寺のような魅力的なお寺にあっても、人出はさほどでもなかった。
しかしここでは駐車場に誘導員が立ち、写真を撮ろうにも、観光客(自分もまぎれも無い観光客ですが)を避けて撮るのが一苦労という有様。
建物と路地以外にはこれと言って珍奇なものも無いんですが……と、さらにびっくりするのは、単に昔のままの街並が残っているというだけでなく、現役で暮らしておられる方が多数いるというところ。
路地は狭く、観光客でごった返していますが、そんな中で暮らすのって、どうだろう。

三歩行くと私有地、三歩下がると人のうちの庭先。
「世捨小路」だとかの意味深な名前の付いた路地を歩くにもなんだか恐縮な気分ですが、来たからにはしっかり見て帰らないと。
羽目板張りの壁に、屋根には石が乗せてあります。
海風から生活を守る知恵なのでしょう。

漁師町の生まれなので、同じものではないながらも、こういう雰囲気には既視感を感じます。
実際うちのほうにも板張りの建物はあって、防腐のためかわざと最初から焼いてあって、触ると手が黒くなったり、軒下には砂利のかわりに貝殻が敷き詰めてあったりしました。
まあ……宿根木みたいな統一感はなかったし、綺麗でもなかったけれど。

実にコンパクトにまとまった集落の中、川が流れ、神社とお寺があり、集会場がある。
この左手が集会場、右手奥へ行くとお寺です。
多少、改修されたところもあるとは思いますが、足下の石畳も昔から集落ぐるみで作られたもののようです。
小川も綺麗で、菖蒲が生えていたり、住民の方が洗いものをしていたりしました。

お寺、墓地もあります。
入り口横の地蔵堂のようなところが岩盤をくり抜いて作ってあります。

この集落の建物の秘密は、何を隠そう、「船」です。
船大工さんが船の廃材などを使って建てたことで、独特な形状や特徴を得ることとなったということです。
例えば、この家にしろ、こういう特殊な角度を持たせた壁の作り方ってのは、普通なかなかしないものですが、実に納まり良くできている。
船の形状を思い浮かべると、どうしてそれが実現できたのかが納得いくというものです。

細部にも、こんな意匠があったりして。
色彩は渋い色で統一されていますが、形がみな独特で、そこがかえって味わい深いです。
船に使われるのと同じ板材であれば、潮風や水気にも強いわけだし、廃船をばらして張り替えたりもできる。
合理的発想です。

集落の公会堂。
観光イベントや展示を行っています。

そんでもって、これが全国的にも有名な建物、「三角家」。
名の通り、三角形の家なのですが、実際に近くで見てみると、壁が微妙なアールというか膨らみを持って作られています。
そこに羽目板がぴったり納まっている、驚愕の技術力。
内部も公開されていましたが、大変コンパクトでカラクリ箱的(お店だったらしい)、まさに陸上での船上生活といった趣でした。
大変おもしろい。

観光客が来るということで、喫茶やギャラリーなんかも作られているようです(お客さんで一杯でしたが)。
長居はしづらいものの、見る価値のある文化遺産という実感、訪れて良かったです。
こうして出来上がった写真を見ると、銀塩モノクロで撮ったのも正解だったとも思います。
多少アカデミックにもなった我々の佐渡行ですが、さて、本土へ戻るフェリーまであと二時間強というところ。
宿根木集落はフェリーが発着する小木港にもほど近いので、乗り遅れる心配は無さそうですが、なかなか来ることのできないこの土地で、しておかねばならないことはあと幾つあるでしょうか。
おむさ……なんです、大事そうに抱えている、その酒の包みは?

というのは冗談、宿根木の前に、我々は酒蔵に寄ったのですね。
佐渡は酒どころでもあり、中でもこの尾畑酒造は、全国規模の品評会でも連続金賞をとるほど。
試飲しましてね、おむそん「これはウマイ……」との嘆息からの即購入決定。
まあ、狛は運転手ですが、もともと飲めないんで悔しくもなく……こういうのを適任って言うのかな、どうだろうか、なんか微妙な気分だな。
そう、おみやげ、おみやげは買わないとね!
(もうちょっと続きます)